下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治
前号でLCCのウエブチェックインについて触れた。成田空港は、ウエブチェックインをすませ、搭乗券を出力していても、カウンターで成田空港用の搭乗券に替えなければ搭乗できない。
同じような混乱はアジアでもある。11月12日、ハノイからバンコクまでエアアジアに乗った。少し前、ホーチミンシティからエアアジアを利用した。そのとき、出力した搭乗券を使うことができなかった。
「ホーチミンシティで使えないのだからハノイでも……」
そう思っていた。同じベトナムの空港である。
ハノイのノイバイ空港のチェックインカウンターには、ふたつの列があった。ひとつは通常のカウンター、もうひとつはウエブチェックインをすませた搭乗客用だった。
出力した搭乗券を片手に、後者の列に並んだ。預ける荷物はない。
搭乗券を差し出すと、データを打ち込み、確認が終わると、搭乗券を上下で2枚に切り、搭乗口など書き込み、2枚をホチキスで停めて返してくれた。バンコクやクアラルンプールと同じスタイルだ。搭乗するとき、2枚のうち、1枚を切り離す。
訊いてみた。
「搭乗券を出力していて、荷物がなかったら、カウンターでチェックインをしなくてもいいんですか?」
「いえ、チェックインしてください。確認がすまないと乗ることができません」
原理的にはホーチミンシティや成田空港と同じだった。別の搭乗券を使うか、使わないかの問題だけだ。
このウエブチェックインスタイルは、アジアでは大きな問題になっていなかった。
皆、ウエブチェックインをし、搭乗券を出力し、チェックインカウンターに並ぶ。混乱しているのは日本人だけだった。
おそらくそれは日本の国内線の影響だろう。日本の国内線のシステムはかなり進んでいて、バーコードをかざすだけでいい。
荷物がなければ、チェックインカウンターに並ぶ必要がない。
しかしアジアはそこまで進んではいない。ウエブチェックインの考え方が違うのだ。
LCCのウエブチェックインをめぐって、日本とアジアのシステムが誤解を生む。日本人は、バージョンをひとつ下げて接するということなのだろう。
その日、僕は朝の5時にハノイのバスターミナルに着いた。バンメトートからダナン、ダナンからハノイ。夜行バスに2晩。59歳にもなってすることではないかと思うが、エアアジアの予約を入れてしまっているからしかたない。
狭いエアアジアの機内。しかし夜行バスに比べればだいぶ楽だ。座席に着くなり寝込んでしまった。目を覚ますと、バンコクのドーンムアン空港だった。