「タビノート」下川裕治:第66回 インドの空はインディゴで染まる?

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

久しぶりにインドに向かった。アッサム州のディブラガルから最南端のカンニャクマリまで列車に乗るためだった。
 まずディブラガ行きの飛行機を探した。そしてカンニャクマリ。この街には空港はなく、トリバンドラムが最寄りの空港だった。そこから帰国することになる。
 いろいろと検索していったのだが、最安値のLCCとして出てくるのはインディゴばかりだった。なんだかインドLCC世界はインディゴに染まったような気配すらある。結局、バンコク→コルカタ、コルカタ→ディブラガル、トリバンドラム→コーチという3路線がインディゴになってしまった。コーチからバンコクまではエアアジアが安かったが。
 インドの空はこんなだったのだろうか。
 しばらく前、僕はインドで乗ったLCCはキングフィッシャーとジェットエアウエイズだった。数年前の話だ。インディゴという航空会社は、正直なところ、その名前も知らなかった。知人はこんなこともいっていた。
「キングフィッシャーのサービスはいいですよ。きっとインド一になる」
 ところがいま、インドのLCCといえばインディゴという時代になってしまった。
 東南アジアを見ていても思うのだが、LCCのシェア争いは本当に厳しい。あっという間に色分けが変わっていく。ピーチ、バニラ、ジェットスターが多くの路線を占め、なかば無風状態が続く日本とは、なにか勢いが違うような気がする。
 インディゴは2006年に運行を開始した。それから約10年。いまではインド国内シェアのトップなのだという。
 3路線に乗ったが、運航時刻はかなり正確だった。コルカタからディブラガル行きの出発が20分ほど遅れただけだった。
 東南アジアのLCCのように、荷物が無料になったり、無料の軽食が出るようなサービスはなにもなかった。すべてが有料。その意味では、LCCの王道を進んでいた。シート間隔はそれほど狭くはなかったが、おそらく運賃と路線数で、シェアを伸ばしている気がする。
 客室乗務員はベレー帽にどこかミリタリー調とも思える制服で、インドのにおいはどこからもしない。新しいインドということだろうか。
 インドの空港も次々に新しくなってきている。コルカタ空港はなんだか恥ずかしくなるほど近代的になった。ターミナルを出た外の世界とのギャップはかなりある。トリバンドラムやコーチの空港も整ってきた。
 インドの新しい空の世界は、どこかインディゴのスタイルとダブってくる。インドではしばらく、インディゴの世界が続きそうだ。

インディゴ
ディブラガル空港に着いた。タラップは旧式だった