下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治
ウェブチェックインには、これまでも何回か悩んだ。LCC各社や空港によって、その対応がまちまちなのだ。
たとえばエアアジアのクアラルンプールやバンコク。ウェブチェックインをすませないと追加料金が必要になる。そして搭乗者がプリントした搭乗券を、そのまま搭乗券として利用する。ところがほかの空港では、空港独自の搭乗券に引き換えるところもある。
10月下旬、マカオからバンコクまでエアアジアに乗った。以前、この空港では、ウェブチェックインをして、搭乗券をプリントしても、チェックインカウンターでマカオ空港の搭乗券に換えなくてはならなかった。ところが今回、プリントした搭乗券をチェックインカウンターに差し出すと、それをふたつに切り、搭乗券として返してくれた。もう、マカオ空港の搭乗券に引き換えることをしなくなったのだ。
成田空港発のジェットスターの国内線も以前は、ウェブチェックインをした搭乗券をもっていても、空港のカウンターやチェックイン機で搭乗券に換えなくてはならなかった。
10月初旬、ジェットスターで福岡に向かった。同行するカメラマンに僕の分も一緒に予約してもらった。空港で待ち合わせた。そのとき、カメラマンがこういった。
「下川さん、最近はウェブチェックインをすると、座席の指定が無料になるんですよ」
座席が決められた搭乗券を渡された。
たしかにウェブチェックインは経費の節減につながる。カウンターの人員を減らすことができるのだ。それを進めるために、「無料で座席指定ができる」というメリットを加えたようだった。
「でも、やっぱり空港の搭乗券に引き換えなくちゃいけないんだろうね」
そういいながら、預ける荷物がなかったので、チェックイン機械の前に立った。すると近くにいた職員が、僕らの搭乗券を見ながらこういった。
「ウェブチェックインチェックインが終わってますよね。そのまま搭乗口に進んで結構ですよ」
「そうなんですか。以前は、ウェブチェックインが終わっていても、ここで搭乗券に換えないといけなかったでしょ」
「最近、そのまま搭乗口に進めるようになったんです」
LCCのチェックインは、国際線、国内線ともに、言葉通りのウェブチェックインに近づいているようだった。
しかしここで面倒なことは、この方法がすべての空港で通用するわけではないということなのだ。そのあたりの説明は、LCCのホームページも曖昧にしている。
戸惑うのは利用客である。以前の成田空港の国際線で、ウェブチェックインをし、それをプリントした紙だけを手に、セキュリティチェックに並んでいる人がいた。職員にいわれて、慌ててチェックインカウンターに走っていく姿を目撃したことがある。
ウェブチェックインは誤解を招きやすい言葉だ。リコンファームのようなもの……という人もいた。いまだはっきりとした線引きがない。しかし、少しずつではあるが、その言葉本来の方法に近づきつつある。