「タビノート」下川裕治:第42回 陸路とLCCの境界は10時間?

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 シェムリアップのホテルですごく悩んだ。どうやってバンコクに戻ろうか……と。
 バンコクからバスと相乗りタクシーを乗り継いでシェムリアップまで来た。バンコクから、アランヤプラテートの国境まで240バーツ、ドル換算して約8ドル。カンボジアに入国し、相乗りタクシーと交渉した。少し急いでいたので10ドルで手を打った。
 バンコクからシェムリアップまで約8時間かかった。
 さて戻りである。
 エアアジアのサイトを開いた。シェムリアップからバンコクのドンムアン空港までは1日3便があった。運賃は60ドル台から90ドル台。夜の便になると安くなった。
 シェムリアップからバンコクまで、相乗りタクシーとバスを乗り継いでいくと、やはり20ドルぐらいだろうか。最も安いエアアジアを買って60ドル。
 その差は40ドルだった。
 シェムリアップからドンムアン空港までの飛行時間は1時間ほどだ。しかし国際線だから、2時間前には空港に着いていた方がいい。そういう時間を加えていくと、バンコクの宿泊先まで4~5時間がかかることになる。
 料金差40ドル。
 かかる時間差は3時間ほど。
 どちらを選ぶだろうか。
 アジアのLCCは近距離路線が多い。飛行時間にして1時間前後が多い。もちろんその区間はバスも走っている。
 たとえばバンコクーチェンマイを考えてみる。バスで行こうとすると、10時間以上かかってしまう。夜行バスに乗るのが一般的だ。しかし飛行機なら、国内線ということもあり3時間程度で着いてしまう。
 それを比べたとき、どうしてもLCCになびいていってしまう。シーズンや買う時期によってLCCの運賃は変わるが、気持ちが行く前からLCCに傾いているのだ。だからLCCが安くなる時期を狙うことになる。
 LCCを使うか、陸路でいくか。その境界はなんだろうか。いままで旅を思い返してみると、陸路移動の時間のような気がする。夜行バスで10時間以上ならLCC。10時間以下なら陸路。ざっくりではあるが、そんなふうにして僕は決めてきた気がする。
 運賃を見れば、陸路のほうが安い。しかしLCCのキャンペーン運賃が手に入ったりすると、その差は縮まっていく。一概にはいえないのだ。
 やはりわかれ目は所要時間──。
 そして僕の境界は10時間。
 これはやはり長いのだろうか。僕だけの基準なのだろうか。
 結局、今日、陸路でバンコクに戻った。7時間半かかった。

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カンボジアの観光ビザは、昨年10月から30ドルになった