大泉りか
大泉りか(おおいずみ・りか)
作家、コラムニスト。04年に「ファック・ミー・テンダー」(講談社)でデビュー。その後、ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や育児などをテーマとしたコラムを多く手掛ける。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮らして14年目の犬飼い。現在、もうすぐ2歳になる息子の育児中。Twitter ID:@ame_rika
子連れウラジオストク旅行、3日目は公園からスタート。一歳半の息子は今いる場所が国内か海外であるかなんてわからないわけで、公園が一番楽しいのです。生憎の天候で小雨が降る中、ホテルから歩いて20メートルほどのところにある公園へと向かいます。しかしロシアの遊具はすべてが大きい。
階段の段が大きすぎる。
公園で遊ばせた後、ランチはウラジオストク駅前にあるスタローヴァヤと呼ばれるビュッフェスタイルの食堂『リパブリック』で朝食。
スタローヴァヤは、ショーケースの食べ物が並んだデリスタイルで、そこから指さしで選べるので、言葉が通じなくても食べたいものを食べられるのがありがたい。カレイのムニエルとマッシュポテト、ビーツのサラダなどを食べました。内装はそっけなくて役所の食堂のようでしたが、味は美味しかったです。特にマッシュポテトはクリーミーでトロトロ。ロシアメシ、どこで食べても日本のレストランレベルなのが恐ろしい。店内は広く、子どもが自由に遊べる、塗り絵が用意されていました。
お腹がいっぱいになったところで、金閣湾をクルーズする遊覧船に乗るために、ウラジオストク駅の裏手にある遊覧船乗り場へ。フェリーターミナルからウラジオストク駅に背中を向けて左手に進むと、小さな事務所があり、その裏が遊覧船乗り場になっています。が、意外と人気スポットらしく時間ギリギリにチケット売り場に到着すると、ツアーの中国人観光客たちがごった返していて、すでにチケットは売り切れ。
金閣湾遊覧船
なんとかならないかと乗り場に移動して尋ねたところ、大きな遊覧船には乗れないが、小さな遊覧船に乗せてもらうことになりました。
我々が乗船できたのはこちらの船です。一応遊覧船。
小さなほうの遊覧船はまるで漁船。息子を抱っこ紐で抱えて乗車し、デッキに出る時も必ず抱っこした状態をキープ。
揺れるのでしんどいですが、カモメはずっとついてくるし、軍艦は見放題だし、貴重な経験は出来ます。カモメにあげる用のパンを持って乗船するのがお薦めです。
思ったより時間と体力を消耗してお腹が空いたので、グム百貨店並びの「ツェントラーリニー」というショッピングセンターにあるフードコートで昼食を取ることにしました。チャーハンメインの中華料理や、韓国料理屋兼日本食屋(海苔巻きメイン)もありましたが、やっぱりここはロシア料理の店をチョイス。
パイで蓋をしてあるつぼ焼きのスープとひき肉のパイ、カツレツを頼んだのですが、フードコートの食べ物とは思えないクオリティー。何度も言い過ぎかもしれませんが、ロシア料理は本当に美味しい。
キッズスペースも完備してあって、子連れには優しいのがまたありがたいです。
お腹がいっぱいなったところで、ウラジオストク駅まで散策。切符がなくとも、ホームまで立ち入って、そこに陳列してあるシベリア鉄道の車両と写真を撮ることが出来ます。その裏手にあるフェリーターミナルの外のデッキは、軍艦好きにはオススメスポット。わたしが行った日は、目の前にロシアの病院船が泊まっていました。
あっという間に最後の夜。ディナーを取ったのは『Supla』というジョージア料理の店です。なぜこの店に決めたかというと、Gettの運転手にオススメのお店を聞いたところ「美味しいと有名」と勧められたからです。
人気店ということで、本当は予約したかったのですが、ロシア語で予約できる気がせず、並ぶのを覚悟して訪れました。案の定、エントランスには10人くらい先客が。しかしこのお店、待っている間に無料でワインを提供してくれるサービスがあるのです。
赤ワインを飲みつつ待っていたところ、15分かそこらで席に案内してもらえました。ワインがあるなら、いくらでも待てます。
店内は騒がしいですが、子連れということで、気を使ってもらったのか、やや静かなガラス張りのテラス席に案内されました。
ジョージア出身のウエイターが、愛想よくオススメ料理やワインを説明してくれました。ラムのロースト、ラム肉の入った辛いトマトベースのスープ、ヒンカリというジューシーな水餃子、パンの容器に入った、とろとろのチーズの上に生卵を落としたもの、そしてグルジアワインを二本飲んで会計は約1万円。ジョージア料理を食べたのは初めてだったけれど、ほどよくスパイシーな味つけにラム肉がぴったり。こんなに美味しいラム料理を食べたのは初めてです。
ジョージアはワイン発祥の地とされているらしく、ウエイターが「ロシアワインとは比べものにならない」と自信を持って進めるだけあって、飲んだワインも二本とも絶品でした。このレストランに来るためにも、ウラジオストクを再訪したいくらい。というか、絶対にまた来たい。ちなみに息子は旅行の疲れが出たのか、ずっと寝ていました。ありがたい。
2泊3日のウラジオストク旅行。今回は郊外には足を延ばさずに、ほぼ街中だけで過ごしましたが、遊園地や展望台、遊覧船に博物館にショッピングと、十分に愉しむことが出来ました。近い範囲に見所がいろいろあるという意味では、子連れ旅行に適しているとも言えます。しかし、何よりも印象に残ったのはロシア料理の美味しさでした。そこらの食堂に入っても、街中の屋台でピロシキを買っても、日本のレストランレベルで美味しいのです。日本では子連れでレストランにご飯を食べにいくのは、本当にハードルが高い。特にフレンチやイタリアン、ロシア料理といった欧州料理の、雰囲気のいいお店のほとんどは、大人向けです。それがロシアに来れば、ロシア料理は、しゃれた料理でもなんでもなく、ふつうのご飯。ゆえに、子連れでも入れる。日本にあったなら、カップルが記念日に訪れるようなお店に、子連れ対応のトイレがあったり、キッズスペースがあったりするのです。そういう意味で、子連れのママにとっては、ウラジオストクは特別な体験が出来る街だし、子連れでなくとも、魅力がたくさん詰まっている街だと思いました。小児用ユンボとジョージア料理を目的に、また再訪したいと思います。