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評論同人誌サークル「暗黒通信団」の雑文書き。
貧乏ノマド独身。英語は苦手。好きな地域は中東の砂漠。元コミケスタッフ。コテコテの理系。自称高等遊民。
詳しくは http://ankokudan.org/d/d.htm?member-j.html
バルト三国というのはバルト海の東に縦に並んだ3つの小国だ。
旧ソ連の国々で、記憶の限りはソ連崩壊とともに最初に独立した国々だったと思う。
北から順に、エストニア(タリン)、ラトビア(リガ)、リトアニア(ヴィリニュス)という(カッコ内は首都)。
一番北のエストニアはフィンランド語圏だが、南二つはバルト語派という言語系統に属していて、看板などもその言葉で作られている。
単語の意味はわからないが、文字自体はローマ字なので、読めなくはないし、なんとなく英単語への類推がつく。
アラブ圏や東欧の果てよりは物価が高いものの、治安は悪くない。何よりラトビアなど国営航空会社自体が格安エアだというのが好感度抜群だ。
エア・バルティックといって、筆者も以前トルコからスウェーデンへの便で使ったことがある。
機体も標準的なエアバスで、ツポレフなどではなかったから大丈夫。総じてこのあたり、独り旅には向いてるんじゃないかと思う。独り旅以外したことないけど。
そのラトビアの首都リガ。
国際バスのターミナルは鉄道駅の近くにあって、道路は旧共産圏らしくだだっ広い。
ただクルマは結構たくさん走っているので、北朝鮮と違って無事に有効活用されているようだ。
午後6時過ぎにバスを降りたとき、雨はようやく上がり、かすかな夕日が心地よかった。
憑き物を落としたかのように軽やかに荷物を引きずって徒歩10分。宿は駅の近くのはずである。
画面コピーしたgooglemapを見ながら、この建物の5階だよね、いえす、と自問自答してビルの通路から奥に入ると、ドアの奥に螺旋階段があった。
エレベータはないのかと思いながら、大きな荷物を引きずって5階まであがると、そこには謎の塾があった。
ホステルという感じではない。明るい教室から、生徒たちが一斉に東洋の異物に怪訝な目を向け、視線に耐えられず引き返す。
イギリス式の、1階がゼロから始まるアレかと思って、念の為もう1階上に登ってみたが、今度は鍵がかかってて誰もいる気配がしない。
つまりは、何か違う建物に入ってしまったらしいということで、また荷物を持って1階まで降り、周囲をよく見る。
いや、ここだ、どう見ても。
そこでまた5階まであがり、今度はちょうど授業が終わったらしい塾生に、googlemapの画面を見せてホステルホステルと騒いでみた。
ちなみに学習塾ではなくて運転免許講習所だったらしいが。
生徒は「ここじゃない」と首をかしげるばかりで、先生を呼びに行ったが、先生も雇われらしく分からないという。
「でも住所ここでしょ」とBooking.comの画面コピーを見せれば、たしかにここだというので、彼らも困ってしまったらしい。スマンねぇ。
結果的には生徒氏のうちの一人がBooking.comに書かれていた番号に電話してくれ、ラトビア語でバリバリ話を進めて解決を聞き出してくれた。
どうも入口の左側にパスワードを入力しないとはいれない隠し扉があり、ホステルはその奥らしい。
分かるかそんなもん。
宿主(女性)は「行き方とパスワードは携帯電話にショートメールを送った」と主張していたが、こちとらローミングの効く端末なんてもってないので、届くはずもない。
とりあえずパスワードを電話越しに教わりダンジョンの奥へ。
本当にダンジョンで、もう夜だというのにライト一つない。
謎の液体で濡れた階段を、重い荷物を持って一歩一歩登る勇者。もう疲れたよママン。パーティがいないと心折れるというのがよく分かる。
しかしまだ終わらない。
確かに5階に人はいたが「ここはホステルの部屋でレセプションじゃない。受付してから来い。俺?俺は客だ」と言われて追い返されたのだ。
受付なんてどこでするんだと聞くと「ショートメール来なかったか?」と言われる。
もう一度1階まで降りて、別の学生に頼んで電話してもらう。
宿主マダムいわく「これから行くから中に入って20分待ってて」。
また5階へ登り、事情を話して入れてもらい、待つ。重い荷物を引いて登ったり降りたり、シーシュポスかい。
結果として、1ベッド契約のはずが1部屋丸々が当たった。
荷物を床に放り投げ、とりあえず空腹対応に乗り出す。
幸い首都の駅前なのでスーパーのようなものがあった。
トマトとバナナとウィンナー他を買い込んで、部屋で餓鬼のように貪った。お値段8ユーロなり。
続いてシャワーと洗濯。部屋自体は清潔で良いのだが、風呂はダメだった。
バスタブが置いてあるのだが、そもそも排水がなってなく、いつまで経っても石鹸水が流れていかない。
天井が低くてバスタブにたつと頭を打つ。バスルームの床は謎の髪の毛が散らかっていて汚い。
それでも頑張って自分の体を洗い終え、服の洗濯に着手した。
雨中強行軍と大運動会のせいで服は破壊的に汚れており、洗濯必須だ。
洗濯機があったが使い方がわからないので、スーパーの袋に洗剤を入れて水少なめで洗うという近代的手洗いでねじ伏せ、脱水だけは機械に任せる。
乾き方がぜんぜん違うからだ。
読めない文字盤をあの手この手で解読し、とりあえずスイッチオンに至るまで10分。
さらにただ脱水したいだけなのに洗剤なしフルコースの洗濯をされたので、結局、風呂と洗濯だけで1時間以上を無駄にした。
翌日は1日で2都市を見るというパッケージツアー状態なので、22時にはさっさと寝る。起床は5時。修行僧みたいな旅行だ。