tabinoteワタベです。
ニューヨークのツインタワーことワールドトレードセンタービルは2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの被害を受け、倒壊しました。現在は高さ541mというワンワールドトレードセンターが建ち、かつて「グラウンド・ゼロ」と呼ばれた一帯も再開発が進んでいます。
(ワンワールドトレードセンター)
そのワンワールドトレードセンターのふもとに2011年開業した施設が「911メモリアル&ミュージアム」」です。正式名は「National September 11 Memorial & Museum」といい、国営の追悼施設およびミュージアムとなります。
先般訪れる機会があったので、写真と共に様子をご紹介したいと思います。
National September 11 Memorial Museum
晴れわたった春空、文字通り天を突くようなワンワールドトレードセンターがそびえています。かつて存在したツインタワーの跡には黒い石に水が張られており、こちらが911メモリアルと呼ばれる追悼施設になっています。
写真で右手に見えるのがミュージアム、左手の鳥が翼をひろげたような建物はトランスポーテーションハブと呼ばれる駅および複合商業施設です。地上部分は「オキュラス」と名付けられています。
ミュージアムの開館時間は午前9時から午後8時まで(金土は9時まで、いずれも閉館2時間前が最終入場)。朝9時頃に訪れましたが、すでに長蛇の列でした。
入場料は大人26ドル。スマホの画面からカード決済で購入可能です。時間ごとに定員が決まっているようで、私は午前10時の枠に滑り込むことができました。なお、エンパイヤ・ステートビルやメトロポリタン美術館などもセットになったニューヨークシティパス(大人132ドル)でも入場可能です。
順路に沿って見学できたかどうか定かではないのですが、展示の内容は大きく3つに分かれていたと思います。
まずは2001年9月11日の様子を克明に記録したコーナー、次にアルカイダの活動や首謀者たちの足取りなど、テロ事件までの歴史的経緯を記したコーナー、3つめがテロに対する世界の反応や犠牲者のケア、その後の復興などを記したコーナーです。
9月11日の様子を記したコーナーは、このミュージアムでもっとも大きなスペースをとっています。当日の出来事を分単位で図示しており、臨場感にあふれた写真や、倒壊した建物や航空機の残骸、消防車などが置かれています。生存者の証言や機内アナウンスなども音声で聴くことができました。ハイジャックされた時の機内アナウンスなども文字起こしされていました。
午前8時46分、ノースタワーにユナイテッド航空11便が激突、続いて午前9時3分にサウスタワーにユナイテッド航空175便が直撃、2つのタワーが崩れ落ちた様子です。
こちらは最後に焼け残った建物の柱。東日本大震災で津波に耐えた「奇跡の一本松」を思い出しました。
最も重要な展示として、全犠牲者(2983名)のポートレートが掲げられていました。ポートレートのコーナーは撮影禁止です。
歴史的経緯やその後の復興、FDNYの活躍、再開発などについても一通り展示がありますが、わりとあっさりしていました。なにしろこのミュージアムに来る時点で、再開発によりすっかり変貌を遂げたビルや施設を見ているわけですので、それがなによりの復興展示という気がしました。
館内の総面積は約1万平方mと実際にはそれほど広くないのですが、吹き抜けを多用する入り組んだつくりで、実面積以上の規模感がありました。
テロ事件と戦時下の事件ということでは意味合いが違うのですが、広島の「平和記念資料館」や中国・南京の「南京大虐殺紀念館」、カンボジアの「キリングフィールド」跡など、悲惨な出来事を記憶にとどめるミュージアムというのは各所にあり、私も比較的熱心に訪れてきた方だと思います。
そういった施設の中には、被害のひどさや大きさを強調しつつ加害者側への厳しい感情を喚起させるような、どちらかというと政治的な色を感じるものもいくつかありました。
しかしこの「911メモリアル&ミュージアム」からは、あまりそういった色は感じられませんでした。ただただ当日の「驚き」と「悲しみ」に焦点をあてていたという印象です。
なお、再開発で観光スポットとなったミートパッキング・ディストリクトには「グラウンド・ゼロ・ミュージアム・ワークショップ」という施設があります。こちらは911当日のFDNYなどによる活躍に焦点をあてた写真メインのミュージアム。
911のテロでアメリカは打撃をうけたわけですが、生まれ変わったワントレードセンターやトランスポーテーションハブの人だかり、FDNYのヒロイックな写真などを見ていると、アメリカという国のパワーと人々のひたすら前向きなメンタルを実感せざるをえませんでした。この国に戦いを挑むって大変なことだよなと、つくづく感じさせられた次第です(日本も昔やっちゃったわけですが…)。