先日、主要なダークツーリズムスポットをまとめたムック本、「世界ダークツーリズム」が洋泉社より刊行されました。
世界ダークツーリズム
ダークツーリズムとは戦災や災害跡地、虐殺現場や収容所、強制労働など死や悲劇の生じた現場をめぐる観光のこと。
角田光代さん、古市憲寿さん、森 達也さん、蔵前仁一さんなど硬軟とりまぜた豪華な執筆陣で、写真も豊富。tabinoteメルマガでもおなじみの我らが下川裕治さんは南京、ハルビン、ハノイと3ヶ所寄稿されています。
この本にはなんと現地までの行き方ガイドがついています。リサーチはこの手の調査が大好物なtabinoteが担当しました。
発売を記念して、tabinoteでもいくつか「負の遺産」に関する旅行記を掲載する予定です。
tabinoteの「負の遺産」旅行記をFacebookのtabinoteページの投稿からシェアいただいた方には抽選で3名様に「世界ダークツーリズム」をプレゼントします。(終了しました)
さて、今回はtabinoteメルマガで「世界一周ノート」を連載の青木大地さんに、2013年秋のカンボジア・キリングフィールド(チェンエク)訪問記を執筆いただきました。
(プノンペンの雑踏)
2013年11月。プノンペンですることがあまりないので、ふと調べて出てきたのが「キリングフィールド」だった。
市内からバイタクで20分くらい、信号で止まる度に子ども小銭をせがまれながら僕はキリングフィールドへと向かった。
バイタクは往復(見学時の2時間待ちも含む)で15ドルだった。
(市街の南、近い)
(バイタク)
到着して、6ドルの入場料を支払って、日本語解説つきのヘッドフォンを装着すれば、後は自動的に敷地内を歩いて回る簡易的なツアーが始まる。
歴史的な背景やキリングフィールドの成り立ちなど、約2時間をかけて丁寧に説明してくれるので、前もった情報などは全くなくても十分に観光を楽しめる内容になっている。このオーディオ観光はネットなどでも非常に評価が高いので、観光の際には是非試してほしい(無料です)。
1960年代~、ポルポト政権下で起きた大量虐殺を語り継ぐこの観光施設は、未だに出土し続ける人骨が転がる施設内に建てられている。モニュメント的に建てられた塔の中には、大量の頭蓋骨が敷き詰められていて、びっくりするくらセキュリティーが甘い。写真撮影に関しても問題なく行えて、アジア特有の剥き出しの観光システムがそのまま活かされている。
カンボジア共産主義クメール・ルージュの秘密警察が行ったこの虐殺では、知識人などを筆頭に最終的に見境なく人を殺していった。当時のカンボジア人口800万人に対して300万人という犠牲者が出たという点でも、それがいかに異常な事態だったか察しがつく。観光を終えると、完全に意気消沈してしまうこと間違いなしの施設である。
数あるダークツーリズムの中で、これ程までに手軽に訪れられる場所もそうはないと思う。プノンペンから日帰りで所要時間4時間程度、浮き足立った旅のテンションを地獄のドン底に叩き落としてくれる歴史的観光施設「キリングフィールド」。予習不要で、誰もが見終わった後には感慨深いコメントをフェイスブックに投稿しがちなスポット・・・ただその前に考えて欲しいのは、この場所がそこまでメジャーではないということ。誰しもがポルポト政権に対して知識がないこと。そして、そんな拡散なんて不要なくらいにこの施設の持つエネルギーが膨大であるということを。
ショック度120%の観光地、是非「世界ダークツーリズム」でお確かめ下さい。
(一見のどかな場所にあります)