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評論同人誌サークル「暗黒通信団」の雑文書き。
貧乏ノマド独身。英語は苦手。好きな地域は中東の砂漠。元コミケスタッフ。コテコテの理系。自称高等遊民。
詳しくは http://ankokudan.org/d/d.htm?member-j.html
足尾銅山といえば、明治日本の産業革命遺産である。社会科の教科書に必ず出てくる公害問題の始祖みたいなところで、田中正造なんていうキャラは誰しも聞いたことがあるのではないか。もちろん産業革命の世界遺産リストには入っていない。世界遺産は地元や国が保護体制を作って申請しないと始まらないから、黒歴史的なものは封印されてしまう。ということで、旅人ならば敢えて行かねばならないところだ。中身のことなど考えないで、世界遺産だわーいといって出かけていくような方々はパッケージツアーで八幡製鉄所に逝ってら。
では、その足尾に何があるというのか。ボロい廃墟しかないのではないか。いや、足尾には毒の沼地がある。名を簀子橋堆積場という。我々産業奴隷の一行が、眠い目をこすり、朝の東武線急行に乗っていった、これはその訪問記である。
貧乏なので特急など使えない。それどころか金券屋の株主優待券で交通費を浮かせる。時期が悪くて高かったが、東武鉄道の優待券はだいたい850円くらいである。区間急行館林行きと桐生線を乗り継いで相老駅に着いたのは朝8時7分だ。ここで約1時間待ち。産業奴隷の身は深夜まで残業であり、ほとんど寝てない。しかも12月ともなれば寒い。相老駅は、東武線とわたらせ渓谷鉄道(わた渓)が相乗りしている駅で、実は改札無しに乗り換えられる。が、そもそもこのあたりの鉄道はもう車内検札が当たり前だから、いったんはおりてフリーパスを買うことにした。これで少しは安くできる。駅前はロータリーがあるだけで何もない。いや、わた渓の自販機がある。側面にシュールなキャラが描いてある。
駅のホームには座布団の敷かれた待合室があり、ここは快適である。何せ誰もいないので横になって爆睡する。1時間も寝て、9時5分発のわた渓で10時21分、通洞駅に着く。足尾銅山観光といえばここから観光者向けの施設に行くのだが、もちろん我々がそんな普通のことをするとは思わないよね?
「思わない!」「思わない!」「思わない!」
よろしい。ならば前進だ。
駅を降りて右に進み、踏切を渡ると金龍山蓮慶寺という浄土真宗の寺がある。そのすぐ横から登るのだ。ネットのブログには実際に登った人の記録もあるが、だいたい入口を探すのに苦労しているようなので、写真つきで書いておこう。
まずは蓮慶寺の右側の坂を登る。
すると右手に電柱を支えてるロープの麓があるはずだ。この右側に進む。
つまり目の前の崖を右から回り込む。すると(少し見つけづらいが)階段のようなものがあり、登山道であることが分かる。写真の右側あたりから登っていくことになる。
あとは実質一本道だ。最初は急だが5分くらい登れば「庚申」(かのえさる)と書かれた道標がある。
西暦で60の倍数になる年に相当する。さらに登れば、謎の動物を祀ったほこらがある。
保安林の看板も見つかるかもしれない。
そしてそのあたりまで来ればもう迷わない。登るだけだ。やがて、やや開けた場所になり、高圧電線の鉄塔とぶつかる。
高圧電線に沿って右へ曲がり、今度は鉄塔の下を登っていく。道には鹿の糞が落ちているが
中にはペットボトルのフタまで落ちている。
フタにはサ●ガリアと書いてあり、民度とブランドの相関が想起される。そうしてしばらく登ればお目当ての場所、簀子橋堆積場だ。
堆積場というが、実際は赤茶けた鉄酸化物が大量に溶け込んだ湖である。ふもとから湖に向かうジグザグ道と、湖畔の彼岸じみた監視小屋が実に良い味を出している。GoogleMapの地図版には何も書かれていないが、写真版でみることができる(https://goo.gl/maps/BX7Z1EkruXU2)。明確に道があるのに敢えて地図版に何も書かないところに、色々意図を感じる。赤茶けた水は、銅の精錬でできた廃棄物が溶け込んだ毒の沼地だ。これこそが足尾。異世界じみた有害物質の塊を眼下に見下ろしながら、ワイワイ言ってお弁当を食べる奴隷一行は、悪趣味というより精神的にどうかしているかもしれない。といっても、写真を撮ったときには快晴だったのに、30分もたたないうちに、雰囲気の悪い雲がモクモク出現して下山することになった。悪趣味には天罰がつきものなのである。天罰を畏れていては前進などできぬ。
メインはここまでだ。下山ののち、わた渓で間藤駅まで行き、駅前のレンタサイクルでマウンテンバイクを借りて松川渓谷方面を攻めたが、その話はまたの機会に。おまけの写真だけで我慢してもらいたい。