前回に引き続き、旅のリスク対応TIPS。今回は病気・ケガ編です。
病気・ケガ編
薬でなんとかする
慣れない海外で体調を壊すことはよくあります。
腹痛や風邪などの軽い症状の場合、できれば宿・ホテルで静養し、現地の薬局で売っている薬を買うのがベストです。海外で売っている薬には効き目が強烈なものがおおく、日本の薬をいくら飲んでも治らなかった症状が即効的に治った、という話もよく聞きます。特に、東南アジアやインドで腹痛になった場合には毒々しい現地の薬が速効で効きます。
医者に行く
医者に行かなければならない場合、やはり症状を現地語にどうやって訳すかという問題が出てきます。
クレジットカード会社や海外旅行保険のヘルプデスク、大使館・領事館では現地の信頼できる病院を紹介してくれます。基本は英語ですが、場所によっては日本語可能なスタッフがいる病院もありますので、まずはそちらにコンタクトをとってみましょう。
それほど大げさにしたくない、現地の病院で十分という場合には、なるべくホテルや宿のスタッフに付き添ってもらいましょう。たとえ受付が長蛇の列をなしていても、現地人ならではの突破力でなんとかしてくれることを期待しましょう。その後はそれなりのチップをお忘れなく。
付き添いがいない、本当に具合が悪いという場合は、とにかく脂汗をタラして救急窓口に潜り込めばなんとかなる!と開き直りましょう。
日本でもそうですが、医者が英語に堪能とは限りません。しかし、よほど僻地ででない限り1人くらいは英語ができるスタッフがいるものです。
さて、交通事故やデング熱など、もっと深刻な事態の場合はどうするか。
クレジットカード会社や海外旅行保険のヘルプデスク、大使館・領事館など信頼できる病院を紹介してもらうことが必要となります。
海外旅行保険に入っていれば、保険会社に連絡することで提携病院の予約から通訳の手配、入院準備などを速やかに行ってくれます。多くの場合はキャッシュレスサービスといい、現地での支払いを建て替える必要もありません。
・青木大地さんの体験記
https://mag.tabinote.jp/archives/6615
さて、キャッシュレス診療を受けることができればラッキーですが、自己負担が生じた場合の手続きです。
日本の健康保険に入っていれば、国内と同様に海外での医療費支払い分の一部を給付してもらえます。「海外療養費」という制度です。
ただし、たとえば海外で盲腸を手術・入院して100万円払った場合、3割負担なら70万戻るかというとそんなことはありません。ベースとなる医療費は、海外で受けたのと同じの治療を日本で受けたと仮定した金額となります。日本で同様の盲腸手術・入院が30万円の場合、その7割として21万円しか戻りません。
その逆に、海外で10万の治療が日本で20万円だとしても、安い方の10万円が基準となります。また、日本国内で保険適用となっていない医療行為・薬はそもそも給付対象外となります。
入院するような事態になれば、当然健康保険の海外療養費制度では全く足りません。やはり、海外旅行保険に入っておくか、補償の厚い保険のついたクレジットカードをもっておいた方が安心です。
クレジットカードの場合、注意が必要なのはカード会員のみにしか保険が附帯しない場合。同行した配偶者や子供が保険の対象外になる場合があります。配偶者や子供も対象になる「家族特約」の有無と共に、そのカードの保険が旅費の決済を条件とする利用附帯か、カードの保有だけでOKな自動付帯かを確認しましょう。家族特約がなければ、配偶者や子供の分だけでも別途保険を検討した方がよいでしょう。
おまけ;海外で死んだら?
病気、事故で不幸にも海外で亡くなってしまったらどうなるでしょう。
基本的には日本国内と同様に、現地警察または病院で死亡の確認をとる必要があります。変死であれば監察医による検視が行われます。
あなたが1人旅の場合、在外公館(大使館・領事館)での確認、日本の外務省への連絡を経て、日本国内に住む遺族に連絡が行くことになります。遺族が現地に飛ぶこともあるでしょう。
死亡した人に同行者がいれば、その同行者が大使館・領事館・日本の遺族とのやりとりを行うことになるかもしれません。
本人が海外旅行傷害保険に加入していれば、同行者や遺族からヘルプデスクに連絡するのが近道です。残された人の行う作業を支持し、多くの手続きを代行してくれます。もちろん在外公館への連絡は必須です。
さて、海外でなくなった場合、おおまかな手順としては以下のようになります。
・病院での死亡確認(変死・事故の場合は警察届出・検視)→死亡証明の発行
保険金手続きの関係で、正確な死亡時刻の記載が必要です。また、数部必要となることがあります。
・死亡証明の日本語訳→在外公館に提出
・火葬場(安置場)への搬送(在外公館が火葬場を推薦してくれます)
・遺族への連絡と意思確認(現地で荼毘か、日本移送か)
・現地荼毘の場合
火葬・葬儀の日程・費用協議
火葬、「遺体火化証明書」の交付
在外公館で旅券の失効手続き
必要に応じて「遺骨証明書」を発給(機内持ち込みで遺骨の帰国も可能)
・日本移送の場合
火葬場と輸送についての協議
航空会社と移送日程を協議(在外公館、火葬場が代行することも)
エンバーミング処理、「エンバーミング証明書」の交付
必要に応じて「非感染症証明書」「納棺証明書」「遺体証明書」などの交付
「遺体出境許可証」の交付
在外公館で旅券の失効手続き
遺体の空港までの搬送
空港から日本までの搬送
日本から自宅までの搬送
自治体への埋葬許可申請
現地で荼毘に付す場合、総費用の中で多くの割合を占めるのが葬儀・火葬代。日本に移送する場合には空港から日本までの移送費用が高額となります。
総費用については本当にピンキリですが、東南アジアでの葬儀で30万円程度~、遺体を日本に移送する場合なら100万円以上かかるようです。
海外旅行保険では「救援者費用」という名目で遺体の処理費用や日本への移送料などがカバーされていますので、事前に内容を確認しておきましょう。