旅のトラブル 体験記&TIPS 盗難・紛失・強盗編

tabinoteワタベです。

LCCの普及もあり、すっかり身近となった海外旅行。しかし、日本ほどに治安もよく安全な国はマレ。旅先ではスリやおきびきなど、盗難リスクを意識する必要があります。なれない環境と移動で、紛失や手荷物の破損がおこるかもしれません。運が悪いと強盗に出くわすことも…。

ケガや健康問題も深刻です。屋台でのんだ生ジュースが命取りになってトイレから一歩も出れず、といった軽いものから、乗ったタクシーがバイタクとガッチャン、宿についたらアレ、首に違和感が….といったトラブル、さらにはマラリアやデング熱などの笑えない病気まで、旅にはさまざまなリスクがつきまといます。

これから2回にわたり、旅のリスク対応TIPSをご紹介します。
トラブルを完全にふせぐのは難しいですが、事前に対処をしっていればそれほど怖くない!


盗難・紛失・強盗編

ショップでお会計しようと思ったらあれ、バッグが切り裂かれてる…。
サイフはもちろんパスポートもない….。
こんな事態にあったとき、天をあおぐ前に、冷静かつすばやく動く必要があります。

旅の4大アイテム「スマホ」「クレジットカード」「パスポート」「現金」の有無によって以下のような対応が必要となります。

現地で使えるスマホがあるかないか

スマホがあれば、すばやく現地の警察・大使館、そしてカード会社の情報などを調べましょう。もしクレジットカードがなくなっていれば、カードの停止が最優先です。海外ヘルプデスクのオペレーターが、警察への届出などなどガイドしてくれるかもしれません。また、もし海外旅行保険に入っていれば、そちらのヘルプデスク(たいていは24時間対応)に連絡し、指示をあおぎましょう。

スマホはあるけどデータSIMのみ、あるいはWIFIルーターなので通話できないという場合もあります。事前にスカイプなど、一般の電話回線にも発信できるアプリを入れておくと安心でしょう。

スマホがなければ、何らかの手段で警察やカード会社などの情報を調べしなければなりません。日本からそういった情報を控えてきていれば別ですが、わからない場合にはホテルに戻ってでも、その辺の人にお願いしてでも、手助けしてもらう必要があります。
ホテルに戻る電車賃がない?それはご愁傷さま…。

クレジットカードがあるかないか(被害にあったか)

クレジットカードがあればひとまず安心。キャッシング機能がついていれば、現金も調達できます。とはいえ保険の手つづきもありますので、できるだけ当日のうちにヘルプデスクなどに連絡しておきましょう。

クレジットカードを紛失した・盗難された場合は、上にも書いたとおりカードの停止が最優先です。パスポートも一緒に被害にあっていた場合、あなたの誕生日から暗証番号を推測されてしまうかも…。
スマホがあればその場からヘルプデスクへ連絡、なければホテルに戻るかその辺の人にたよるかして、なんとか連絡をとります。

パスポートがあるかないか

なくなったら最も困るものがパスポートですが、手つづき的にはカードの後でいいでしょう(どうせ、そんなすぐに出てきませんし、早く警察にかけこんだからといって悪用をとめられるわけではありません)。

パスポートが盗難・紛失にあった場合、2通りの対応があります。
1つが「帰国のための渡航書」を申請し、そのまま日本へ帰国する方法。パスポートの再発行は帰国後に日本で行います。
もう1つが、現地でパスポートを発行をする方法。前者は最短で翌日には発給され、後者は10日程度必要となります。

帰国のための渡航書 在アメリカ合衆国日本国大使館
国内及び国外でパスポートに関する申請手つづきに通常必要な書類

いずれの場合でも、警察への届出が必要となります。警察に紛失届、もしくは盗難届を提出し、その証拠となる書類をゲットします。
ちゃんとしたホテルに泊まっているか、語学力に自信がない場合にはホテルのスタッフに助けを求めるとよいでしょう。

わたくし、以前ドイツで盗難にあいまして、Googleマップで警察を探し(日本のように派出所のある国はめずらしく、だいたい警察署にいくことになります)、むかいました。アンジェリーナ・ジョリーを格闘家にしたようなゴツイ婦警さんが応対してくれました。

(ドイツの盗難被害届;写真 tabinote 渡部)

現地で長期滞在する予定がある場合、これから周遊の長旅を計画していた場合などをのぞくと、ほとんどの人は「帰国のための渡航書」を申請するのではないでしょうか。
その際には、パスポート用の写真、日本国籍があることを確認できる書類(運転免許証など)、旅程が確認できる書類(航空券など)が必要です。
運転免許もサイフごと取られていたら?そもそも免許には本籍記載がないので証明にならないのでは…、そんな疑問もありますが、このあたりの手つづきや必要な書類については旅行者の体験談もびみょうに異なっており、外務省、各国の大使館サイトにもふしぎなほど情報がありません。
最近はeチケットなので、ツアーでもない限りそもそも旅程表がないということもあるでしょう。どうすれば?

実際には、その人の被害状況を見て、かなり個別のケースにそった対応をしてくれるようです。例えば、表向きには現金をなくした旅行者に対して大使館や領事館がお金をつごうしてくれることはありません。ただし、同胞として職員の方々が好意から何かしてくれるかもしれない、ということはなくもないかも….ということで、このあたりははっきり明記できないのでしょう。
「帰国のための渡航書」の申請費用は2500円です(2018年1月時点)。

現地でパスポートを発行する場合には、日本での申請と同様に戸籍謄本の原本が必要となります。費用も日本と同様、10年旅券が16000円、5年旅券が11000円となります(2018年1月時点)。

余談ですが、2006年にインドでパスポートを盗まれた女優・中谷美紀さんの場合、盗難届を警察に出そうとしたら裁判になるとおどされ紛失届に変更、10日後に新たなパスポートが発行されました。

なお、「帰国のための渡航書」にせよ新規発行にせよ、いったん申請してしまうと後からパスポートが見つかってもそのパスポートは使えません。
旅行作家・高野秀行さんの場合、またまたインドの事例ですが盗まれたパスポートが2週間後に領事館に郵送されてきました。そういったこともあるようです。

海外で困ったら 大使館・総領事館でできること
在外公館リスト 外務省

現金(または現地で現金を引き出させるカード)があるかないか

予備の現金、または、現地引き出し可能なカード(キャッシング機能がついたクレジットカード、現地の通貨をおろせるキャッシュカードなど)があれば、とりあえず旅は続けられます。昔はトラベラーズチェックがありましたので、なくしても再発行が可能でしたが、今では見ることもありません。

さて、現金も現地引き出し可能なカードもない場合には、日本から送金してもらうしかありません。
パスポートが手元にあれば、日本から現地の銀行・郵便局に送金してもらうことができます。大手の銀行や郵便局から国際送金をしてもらうよう日本の家族や知人に依頼します。期間は数日かかりますので、その間の生活を含め大使館・領事館などに相談しましょう。

なお、旅行保険では多くの場合、現金は対象外となります。

これはウラ技ですが、中国で現金が足りなくなり、キャッシング機能のないクレジットカードしか持っておらず困ったことがあります。某5つ星日系ホテルに行って相談したところ、宿泊者には一定の現金を貸し出すという便宜をはかってくれるということを聞き、大枚はたいて泊まったことがありました。どの国でも、同胞に相談してみるのは1つの手です。


(コペンハーゲンのフライングタイガー本店;写真 tabinote 渡部)


以上から、盗難・紛失リスクを避けるには以下のような心がまえが必要となります。

事前準備
(1)クレジットカード、保険会社の海外ヘルプデスクの電話番号、滞在先の大使館・領事館の場所をメモっておく
(2)保険の種類を確認
(3)パスポートのコピー、運転免許証を用意しておく。可能であれば、国際運転免許、戸籍謄本の原本も用意しておく
(4)クレジットカードはキャッシング機能付きを2枚程度もち、分散しておく
(5)国際キャッシュカードや現地通貨が下ろせるキャッシュカードがあれば、口座に一定の現金を入れておく
(6)スマホは、SIMフリーでも海外ローミングでもいいので、現地で通話が可能な状態にしておく。データ通信のみの場合やWIFIルーターの場合はスカイプなどの外線に通話可能なアプリを入れておく
(7)たよれる家族・知人をつくっておく
(8)民泊の場合、ホストが常駐しているかどうかを確かめる。多くの物件を運営しているような”プロホスト”の物件はなるべく避ける(非常時にアテにならない)

旅行中~後の心得
(1)持ち物は分散する。1つのポーチやサイフに現金やカード、パスポートをすべて入れるようなことはしない
(2)リュックは避ける。リュックの場合は前に背負うなどして目を離さないように。現地のスーパーのビニール袋などが最高
(3)観光地、駅、空港、ホテルのロビーなど、不特定多数が出入りする場所では特に注意
(4)盗難にあったら、まずカードを止めて警察か大使館・領事館へ
(5)帰国したらすみやかに旅行保険、カード附帯の保険を確認


私の場合、重要書類をすべて写真におさめ、クラウドサービスに入れています。なにかの被害にあっても、最悪現地の大使館でPCを借りれば情報を確認できます。また、サイフも持たず、手ぶらでポケットに現金かカードを入れています。

ただし、どんなに準備しても紛失したりスられたり、運悪く強盗にあってしまうのは避けようもないところがあります。命があっただけマシ、気持を切りかえて残りの旅を楽しみましょう。

なお、海外旅行保険は病気やケガの補償にのみ関心が行きがちですが、紛失や盗難の場合には「携行品損害保険」が利用できます。クレカの保険には、旅費をそのカードで決済することが必要な「利用付帯」とカードの保有だけで保険が適用となる「自動付帯」のものがあります。自動附帯のカードがあれば安心ですが、利用附帯のみであれば条件の有利なカードで決済しておきましょう。

(続きます)