香港エクスプレス航空で行く! 香港・トレイル探索

ここでは、tabinoteを使った旅行の体験や知識を共有していきたいと思います。お得情報や旅のコツ、旅の楽しさを分かち合う場としてご活用いただければと思います。

(注:本事例はtabinoteメールマガジン第28~29号(2014年7月29日号~8月12号)に掲載されたものです。内容は2014年3月時点の予約可能なプランおよび費用にもとづいており、実際にtabinoteスタッフが体験した旅程と写真を使用しています。)

香港エクスプレス航空で行く! 香港・トレイル探索

計画編

tabinoteワタベです。
ひょんなことから香港エクスプレス航空の激安チケット(往復15,000円也)を入手した私、4年ぶりの香港です。

せっかく行くならtabinoteのネタになるような場所を紹介したいと思いましたが、街歩き、グルメ、電脳雑貨…などはいろんな場所で紹介し尽くされてるしなー、とテーマを決めかねていました。
当時登山熱が高まっていた私。香港で山歩きとかできないかなと思い調べてみると、意外や意外、知らなかったのは私だけでしょうか。香港が亜熱帯の島であることを再認識させられるような、大自然ネタの数々が見つかりました。
特に、この本は大変参考になりました。

香港アルプス ジオパークメジャートレイル全ガイド

なんと香港は全面積の4割が国立公園・自然保護区に認定されており、ユネスコのジオパークもあるという自然豊かな場所。
香港国際空港から市街・香港島に向かう道すがら、結構険しい山々があるのに気づかれた方も多いことでしょう。空港のあるランタオ島は標高934メートルの鳳凰山をはじめとしてゴツゴツした山並みが連なり、ビルや建物からすぐに急峻な山が現れます。
香港島を見下ろすビクトリア・ピークも相当な急勾配の山。標高は500メートル程度ながら、トラムを使わずに自分の足で登るのはなかなか大変です。ピークや香港島のビルから本土側を見ると、ビルの向こうに尖った山並みを見ることができます。
喧噪と高層ビルのイメージが強いですが、実は自然を活かしたアクティビティもかなり楽しめるんですね。

本によると、香港の大自然を整備していったのは主にイギリス人。19世紀後半、租借地となった香港でイギリス人が植林をすすめ、丸裸の岩山を緑に増やしていったとか。
1970年代以降、当時の英国人提督・マクリホースが熱心に郊野公園(カントリーパーク)を整備し、現在も市民に親しまれる4つの長大な自然道(トレイル)が完成。最初に開通した、自身の名を冠した「マクリホース・トレイル」はなんと全長100km!本土側、東の萬宜から名峰・馬鞍山を経て西のはて屯門までつづくトレイルは、香港はもちろんアジアでも有数の規模だそうです。
続いて、空港のある自然の島ランタオ島のランタオ・トレイル、香港島を東西に網羅するホンコン・トレイルと続き、最後に中国返還の前年1996年、本土側から香港島の南端までを南北に結ぶ全長78kmのウィルソン・トレイルが開通し、現在では4大トレイルとして親しまれているようです。

香港4大トレイル
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(画像:www.ofca.gov.hkのMobile Network Coverage Survey をもとにtabinote作成)

そして、2011年には香港ジオパークがユネスコにより世界ジオパークに認定されました。


「香港アルプス」を見つけたとき、「これだ!」と思いました。
目的の無い旅もいいけれど、今回は香港滞在2泊の短期決戦、ここはガッツリと香港の山に行ってみたい!という気がむくむく湧き上がってきたのです。

代表的なルートの見どころを調べてみると…。

マクリホース・トレイル

全長100kmにおよぶ最長のトレイル。名峰馬鞍山やライオンロック、香港最高峰の大帽山(957m)を擁し、比較的険しめ。
特に馬鞍山は雄大で登りごたえがあり「世界で一番高い700m峰」と呼ばれているとのこと。面白そうです。
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(画像:Wikipedia)

ランタオ・トレイル

全長70kmの周回コース。高低差が大きく山も深め。
マクリホース・トレイルの大帽山(957m)は車道が通っているのに対し、ランタオの鳳凰山(934m)は本格的な登山が楽しめ、愛好家にとって実質的な最高峰という声も。実際その姿は標高以上に雄壮でダイナミックです。
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(画像:discoverhongkong.com)

ホンコン・トレイル

ホンコン島のピークを出発し、東に抜ける全長50kmのトレイル。市街からも行きやすく、緑と青、高層ビルのコントラストを見ることができます。ハイライトはタイム誌でアジアのベストハイキングコースにも選ばれたというドラゴンズバック。
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(地図:discoverhongkong.com)
Go on Asia’s best urban hike – Dragon’s Back Trail:「龍の背中」と称されるドラゴンズバックの現地ツアー

ウィルソン・トレイル

中国国境から香港島南端の赤柱までを結ぶトレイルで、なんと途中のビクトリア湾を地下鉄で横断する全香港満喫コース。香港島のトレイルは完全な山登りだそうで、その部分だけでも達成感ありそう。
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(画像:Wikipedia)


各トレイルはセクションに分かれており、途中のセクションだけを行くこともできます。
短期滞在なら全長100kmとかきついですからね。

また、4大トレイル以外にも以下のように魅力的な場所が…。

ラマ島(南Y島)

中環からフェリーでわずか30分。2~3時間程度のハイキングルートで手軽にリゾート気分。海鮮料理店が多いというのも楽しみです。

(地図:discoverhongkong.com)

ジオパーク

複数ありますが、西貢のハイ・アイランドで見られる六角柱状の岩々や美しい大浪湾のビーチが見どころだそう。特にこの大浪湾の野良牛写真にはぐっと来ました…。
(大浪湾の野良牛)
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(画像:geopark.gov.hk、notesplusultra.com)

どーですか、香港のイメージが変わってきませんか?

どこも魅力的ですが、日程的に巡れるのは一箇所。
マクリホースとラマ島で相当迷いましたが、今回はガッツリ身体を動かしたかったので、市街から近く登山が堪能できるマクリホース・トレイルの馬鞍山を登頂するルートに決めました。

馬鞍山のある第4セクション(Kei Ling Ha → Tai Lo Shan)は12.7km・所要5時間。
結構な山道で、難易度は最高ランクの星3つ(Very Difficult)。しかもこのルートには馬鞍山登頂は含まず、それを加えると所要プラス1時間で計6時間程度は必要。

さて、実は私は海外登山どころか、単独での山行自体これが初めて。
なんとかなるのか?まあ大丈夫でしょう…。


実践編

さて、3月某日に香港着。翌日、さっそく早起きして現地を目指します。
荷物は機動性重視で水と食料に雨具程度。小さいリュックとランニングシューズのトレイルラン・スタイルで挑みます。

出発

本土側を東西に横断する全長100kmのマクリホース・トレイルは10のセクションに分かれており、馬鞍山があるのはセクション4(Kei Ling Ha → Tai Lo Shan)。
「香港アルプス」によると、セクション4の入り口は企嶺下(Kei Ling Ha)へはバスが便利。最寄りのバス亭は水浪窩(Shui Long Wo)で、メトロの彩虹駅(Choi Hung)から便が出ているとのこと。

彩虹駅までメトロで行こうと思いましたが、念のためGoogleマップで経路検索してみると、なんとホテルの目の前からバスがでており(滞在していたのは香港島側・湾仔)、そのまま彩虹まで行く模様。路線バスの時間やバスナンバーまで表示されます。香港のGoogleマップは情報量が豊富でナビ機能も素晴らしいです。
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朝食に露店で卵サンドを買い、さっそくバスに乗り込みます。Googleの指定通り101番のバスで海底トンネルを抜け本土側に。20分ほど乗車して彩虹へ。ここからは「香港アルプス」の記述と同じルートになるのですが、彩虹で西貢(Sai Kung)行きのミニバス1A番に乗り換えます。終点のバスターミナルで更に299番のバスに乗り、水浪窩のバス停で下車。
都合バスを3回乗り継ぎ、所要1時間半程度かかりました。
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(写真:tabinote)

入り口

さて、今回のタネ本「香港アルプス」にも「水浪窩で下車、5分ほど歩いて戻る」とありますが、バス停とマクリホース・トレイルの入り口は離れています。Googleマップによると、澳頭新村(O tau New Village)の方が近いかもしれません。水浪窩で降りれば戻り、澳頭新村で降りれば少し先に歩くことになります。
私の場合、水浪窩バス停で下車し、「水浪窩」というゲートをくぐってしまい迷いました。必ず「企嶺焼烤場」のゲートから入りましょう。
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(写真:tabinote;ここから入ると行き止まり)

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(写真:tabinote;こっちが正解)

登り

時刻は9時。空は多少ガスっぽい感じですがそこそこ青空も見え、何より湿気が低くて快適な登山日和です。
企嶺焼烤場のゲートからバーベキュー場を抜けて案内板に従いトレイルに入ります。
しばらくはアスファルトの林道です。
「香港アルプス」の記述通り遮断棒をくぐって竹林へ。ここからが本格的な山道です。
林道では犬を連れた住民も見ましたが、ここからは人っ子1人いません。土曜日なのに。
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(写真:tabinote)

今回は時間制限(※)があるので、なんちゃってトレイルラン・スタイル。走れるところは走ることにします。
※この後、メルマガ第26号でレポートしたLaibachライブに行く予定があったのです。

30分ほど走ると、時々竹林や木々の向こうに遠くに岩でゴツゴツした馬鞍山が見えるようになってきます。頂上は一見森林限界の上でとても高さ700mとは思えない、「あんなとこ登れるの?」という感じの距離感。

案内板のM76あたりから登りがきつくなり、走るのが難しい箇所も。
コンクリの階段がえんえん続き、あきらめて歩きに切り替えます。
この季節だからよかったけど、夏ならだいぶ消耗しそうだなーというくらいの登りでした。
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(写真:tabinote)

ようやく登り切って峠の稜線上へ。
ほぼノンストップ・動きながらの補給でここまで来たので、疲労が溜まっていました。水を補給し休憩。

トレイルは稜線に沿ってT字路になっており、右に向かうと馬鞍山。トレイルは左に向かうと規定のコースで馬鞍山には登らず下ります。その先には見事な三角形の大金鐘(Pyramid Hill;536m)が見えます。
馬鞍山を登るために来たので早速右へ。馬鞍山登頂はガイドブックによると所要1時間となっていますが、急いで登れば30分かからないでしょう。途中には手を使って三点支持で登らないといけないような急な岩肌も多くありました。
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(写真:tabinote)

登頂。誰もいません。
所要2時間程度、距離にして5km、累計標高差750m程度。
山頂からの景色もさることながら、峠の上を続くトレイルを見ていると来た甲斐がありました。
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(写真:tabinote)

ストリートビューを撮ってみました。
こちら

しばらくたたずんで、トレイルに戻り稜線を走ります。
左右足下は切り立った坂道、その頂点には自分と空だけです。
これは、脳汁が出る絶景でしたね。
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(写真:tabinote)

返す刀で大金鐘(Pyramid Hill;536m)も登頂。
こちらも岩肌が荒々しい急坂で、とても走ることなんて出来ません。
ここでやっと他の登山者グループ(白人)と遭遇。ごつい登山靴を履いて両手にトレッキングポールを持ったすごく本格的な装備でしたが、かえって大変なのでは…。
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(写真:tabinote)

正直いつまでも居たい気持でしたが、時間制限もあるので案内板通りにトレイルを下ります。

下り

大金鐘を超えてしばらくするとコースは南に続いていくのですが、私は山の北側、馬鞍山駅からメトロで戻ろうと思っていたので、馬鞍山郊遊徑(Ma On Shan Country Trail)へ。
ここからはほぼ延々と下りが続きます。心肺は楽ですが…、感覚的には斜度20度は超えるであろうなかなかの坂道。下りの一歩一歩で衝撃が来て、前腿の筋肉が壊れていく感じがわかります。明日の筋肉痛が怖いですが、歩いてもよけいキツいだけなのでそのままトコトコ小走りモード。

途中から、キャンプ場やモトクロス自転車の若者達とすれ違うようになりました。皆厳しい表情で登っています。
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(写真:tabinote)

長い下りを経て、馬鞍山郊遊徑は良友路(Good Companion Road)と名を変え市街地に続いています。
街に出て、メトロの馬鞍山駅に無事たどり着きました。

総行程12km、3時間、うち休憩除く純移動時間が2時間20分。累計標高は1,000mくらい。
いやー!、結構疲れました。
馬鞍山に加えて大金鐘も登ったので、ガイドブックの想定時間(7時間程度)の倍以上の速度で歩いたことになるでしょうか。
さすがに第4セクションは、難易度最高ランクとされているだけありました。

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(この日のルート)
香港トレイル

メトロで銅鑼湾に戻り、目抜き通りのヘビ料理屋へ。
優しい味のスープが胃に沁みました。
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(写真:tabinote)

摩天楼からわずか1時間、香港の大自然は素晴らしかったです。こんな整備されたトレイルが身近にある香港の人が羨ましい。
意外に手軽で本格的な香港の自然巡り。
ルートがしっかり整備されているので、未経験者や初心者の方でも大丈夫だと思います。

この旅行記を読んで「行ってみたい」とお感じの方が一人でも現れれば書いた甲斐があります。
それでは。


※備考:香港の山屋
トレイル行の前日、何か掘り出しものでも無いかとアウトドアショップ巡りに行きました。
“The Overlander“、保捷行(プロトレック)、沙木尼(シャモニー)”などの有名店を覗きましたが、日本のショップの方が品揃えは良いように感じました。ネットでは日本より安いという情報もありましたが、その情報が書かれた当時よりも円安のためかそれほど値段も変わらず。結局食料(パワーバー)を数本だけ買って帰りました。
TheOverlander
PROTrek (保捷行)
Chamonix (沙木尼)