「タビノート」下川裕治:第88回 なぜかよく乗るLCCがある

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 しばしばLCCに乗っていると、よく利用する航空会社と、あまり縁がない航空会社が出てくる。申し訳ないが、LCCにはそれほどのサービスは期待していない。どれに乗っても、サービスの面は大差がない。
 選ぶ条件は運賃と時間帯である。それが合う会社と、どうもずれてしまう会社があるのだ。
 たとえば東京から那覇に向かう。僕は国内線のLCCのなかでは、この路線に乗ることがいちばん多い。この路線に就航するLCCは多いが、なぜかバニラ・エアによく乗る。ジェットスター・ジャパンに乗ったことは数えるほどだ。とくにバニラ・エアが気に入っているということではないのだが。
 インドネシアでは、スリウィジャヤ航空によく乗る。はじめて乗ったのは、スマランからジャカルタまでだったように思う。スマランの街に着き、航空券の予約サイトで検索し、この航空会社にした。
 はじめはSriwijaya Airの発音がよくわからなかった。スマランとジャカルタ間の便数は多い。距離も近いから、料金差もあまりない。ジャカルタからバンコクに向かうことになっていたから、運航時間帯で決めた。
 昨年の11月、ペナンからメダンまでLCCを使った。検索サイトを開くと、エアアジアがずらりと並んだ。1日5便もある。そのなかにぽつんとスリウィジャヤ航空があった。午前11時30分発。最近、国際線のチェックイン時間は早くなる傾向がある。以前は2時間前だったが、最近は3時間前からはじまることが多い。2時間前に行くと、もう最後の方になったりする。
 ペナンはジョージタウンに泊まっていたから、空港までは2時間みたほうがいいかもしれない。あまり朝が早いのはつらい。その日はトバ湖まで行くつもりだったから、夕方に着く便も避けたい。もちろん安いほうがいい。そんなことを考えていくと、スリウィジャヤ航空になってしまった。
 あとで調べると、就航は毎日ではなかった。さまざまな要因が重なっていたわけだ。
 飛行機に乗り込むと、民族衣装の客室常務員がいた。LCCらしくない制服。どこかレガシーキャリアのにおいがする。
 この制服で思いだした。パダンから乗ったLCCもスリウィジャヤ航空だった。
 同じ航空会社に何回か乗っていると、やはり安心感が出てくる。要領がわかっているからだ。こうして集客に結びつける方法もあるかもしれない。スリウィジャヤ航空は運航時間帯だった。これは計画的なことなのか、偶然なのか。少し考えてしまう。


ペナン空港。メダンは東にあるが、時差の関係で20分遡って着く