下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
空港から人の姿が消えていく。飛行機は減便に次ぐ減便のスパイラルに入り、やがて空港が閉鎖されていく。生まれてはじめて飛行機に乗ってから40年以上。はじめての経験だった。それは航空会社も同じだ。
これまでも政治的な混乱や事故などで空港が閉鎖されることはあった。しかしひとつの空港の話にすぎなかった。今回は世界規模で、国々は鎖国を強いられていった。
しかし新型コロナウイルスの嵐もようやく収まりつつある。各国は飛行機の運航再開に向けて動きはじめている。本来なら、足並みをそろえて鎖国を開きたいところだが、そうはいかない難しさが新型コロナウイルスがある。自国の感染を封じ込めても、外国人が入ってくると、また感染が再発する可能性がある。各国の感染状況はまちまちだ。タイで外国人が入国する是非をアンケートで調べると、大多数が反対だった。しかしグローバルなビジネスを展開する企業や観光業界、外国人を対象にした店舗などは経営難に追い込まれていく。
どの時点で鎖国を解くか。国によってその対応はまちまちだ。傾向をみると、ヨーロッパが観光客の受け入れに積極的だ。それに比べるとアジアは慎重路線。そんな状況のなかで、どの国に旅にでることができるのか……。
いまのところは、いくつかの情報を参考にしつつ、最終的には各国の大使館に確かめることになる。というのも、新型コロナウイルス対応はめまぐるしく変わる。日替わりということすらある。さまざまな情報が追いついていないこともある。
見やすいのは、IATA(国際航空運送協会)が提供するサイトだろうか。
これによると、トルコ、メキシコ、ウクライナなどが入国制限がなくなったことがわかる。しかし入国制限の解釈の違いもある。その先は、日本の外務省が提供する海外安全ホームページや各国大使館から情報を集めることになる。それでもわかりづらいこともある。最終的には各国大使館や航空会社への問い合わせも必要になる。
飛行機が飛んでいるのか……という確認が必要だ。乗り継ぎ便の場合は、再度、航空会社や大使館への問い合わせが必要になる。乗り継ぎ客にも陰性証明を課している空港もある。
こうして調べていくと、6月27 日の時点で、日本人がほぼ制限なしで渡航可能な国はトルコ、ギリシャあたりだろうか。7月からはスペインも渡航が可能になる予定だ。今後、さらに増えてはいくだろう。
旅は可能だが、日本での帰国時に入国制限が待っている。PCR検査を受け、結果がわかるまで指定施設で待機が必要になる。そして14日間待機……。
渡航国は歓迎してくれても、日本入国は一律制限である。自由に海外旅行の鍵は日本ということか。
バンコクのスワンナプーム空港もほぼ閉鎖。コロナ禍の間にタイ国際航空も倒産した。再建モデルは日本航空らしい