「タビノート」下川裕治:第2回 成田空港発7時台がリーズナブルLCC

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

日本という国の航空事情を考えたとき、国内線に就航して、はじめて効果が出てくるといわれていた。
日本発の国際線は、「世界で最も安く、最も高い」といわれていた。格安航空券というシステムで進化した日本の航空券は、安い時期を見ると、世界標準の運賃に達していた。しかしトップシーズンになると、恐ろしいほど高くなる。それが日本の国際線だった。
国内線は恒常的に高かった。世界のトップレベルだった。この市場があるから、日本航空や全日空はやっていける、とも囁かれていた。
しかし日本国内の空も聖域ではない。LCCの時代に突入した。昨年(2012年)のことだ。首都圏では成田空港が、積極的にLCCの乗り入れに動いていった。
現在の発着スケジュールをみると、早朝便はLCCで埋まっている。
6時発鹿児島行き(ジェットスター)
6時5分発札幌行き(ジェットスター)
6時10分発福岡行き(ジェットスター)
6時15分発沖縄行き(ジェットスター)
6時25分発関西行き(ジェットスター)
7時5分発福岡行き(エアアジア)
7時5分発大分行き(ジェットスター)
7時10分発札幌行き(ジェットスター)
7時15分発福岡行き(ジェットスター)
7時20分発札幌行き(エアアジア)
問題はこの早朝便に乗るための足である。前日にホテルに泊まるなら、LCCを使う意味がない。
その役割を担ってスタートしたのが、東京駅を出発するバスだった。京成バスと平和交通が運行をはじめた。
京成バスは午前1時30分と2時に東京駅を出発する便を設定した。途中のパーキングエリアで休憩し、午前3時30分に成田空港に着く。ジェットスターに合わせたバススケジュールなのだ。この便は毎日、満席状態になっているという。しかしほぼ徹夜のような状態で飛行機に乗らなくてはならない。
京成バスには4時30分、平和交通には4時6分発という便がある。5時前後に成田空港に着くから、6時台のLCCに間に合う。しかしこのバスにどう乗るか……という問題はある。まだ電車は動いていない。
通常のバスは朝の5時台の運行である。
今年の1月、九州にでかけた。6時10分発と7時15分発のジェットスターがある。
僕は杉並区に住んでいるが、始発電車を乗り継いでいくと、5時半に東京駅を出発するバスしか乗ることができない。成田空港到着は6時半。7時15分発のジェットスターに乗ることができるだろうか。LCCの国内線は、一般に1時間前までにチェックインということになっている。締切は30分前である。
体験からいうと、始発電車を乗り継ぎ、5時半に東京駅を出発するバスで、なんの問題もなくチェックインができた。
いまのスケジュールをみると、朝の7時台に出発する便なら、始発電車とバスで間に合う。これが金銭的にも、体力的にも、リーズナブルな早朝便という気がする。