楽しい中国旅行のすすめ(2019年版) その1

文/写真:tabinoteワタベ

はじめに

ニーハオ。tabinoteワタベです。先日も中国に行ってきました。
筆者はもう中国渡航歴10回以上。他の国に比べても中国※は慣れてしまえば快適に過ごせるエリアだと思いますが、初めて訪れる方はいろいろ戸惑うことも多いようです。
※本稿では中国=中国本土をさします

その最たる理由の1つが「英語の通じなさ」でしょうか。台湾や韓国なら都市部ではある程度英語が通じるのにたいし、中国本土では大都市でも意外なほど英語が通じません。日本もあまり他国のことは言えませんが、少なくとも公共交通機関やホテルでは概ね通じるはずです。中国の場合はそれらの場所はもちろん空港ですらろくに通じず、日本のパスポートを差し出しているのに超早口の中国語でガンガン用件をまくしたててきたりするのには閉口します。そんな感じで入国時点からすでに疲れ果てるという方も少なくないようです。

私の感じている、あるいは周囲の方が口にする中国旅行の課題は以下のようなことです。

  • 英語が通じない、使える人が少ない
  • GoogleやSNSが使えない
  • クレジットカードが使えない(ことが多い)
  • スマホ決済(AliPay、WeChat Pay)を外国人旅行者が使えない
  • 街路が広くて歩行者フレンドリーではなく、街歩きが疲れる
  • 街にも公共の場にもとにかく警官が多い
  • 警官や公務員、店員が怖い

しかし、上に挙げたような課題はネットの力を活用し、事前の準備と心構えをすることでなんとか解決できるもの。

一方で中国には他の国にない、得がたい魅力があります。まずはなんといっても悠久の歴史。古代文明の史跡や歴代王朝の都、人里離れた秘境に立つ絶景の寺院など、ロマンをかき立てる見どころには事欠きません。

(誰もが度肝を抜かれる陝西省西安市の兵馬俑)

ダイナミックな自然も見逃せません。中でも水墨画のようなカルスト地形の景勝地や、ヒマラヤに通じる西部の山岳地帯や高原地帯、河の対岸までびっしり凍りつく極寒の北部、南国のようなリゾートなど、広い国土にはさまざまに美しい自然の名所があります。

(絵はがきのような雲南省・冰川国家公园内の藍月谷)

昔ながらの古い街並みや広大な広場、天を突くような摩天楼など街歩きも楽しいです。早朝に太極拳をするご老人たちや、夜に繁華街で広場舞※に興じるおばさんたちを見るのは筆者の密かな楽しみです。警官が多いのは治安のよさの裏返しでもあり、ぶっきらぼうな店員にもすぐ慣れます。
※中国の広場や公園で(主に夜中に)催されるダンス集会。ディスコ調の音楽をバックにおばさん達(たまにおじさんも)がパラパラ+盆踊り的な舞を踊る。

日本人はそもそも中国を旅するのに有利なのです。漢字は少し違いますがなんとかわかりますし、料理にもかなり馴染みがあります。日本人の顔は中国の群衆に溶け込みやすく、南アジアなどのようにジロジロ見られることもありません。

慣れてしまえば意外に楽しく、見どころにあふれた中国。ところが旅先としては台湾や韓国に水をあけられており、日本を訪れる中国人が735万人に達するのに対し、中国に行く日本人は268万人と約1/3にしか過ぎません(2017年;日本政府観光局)。あんなに楽しい国なのにもったいない!

本稿では中国の旅先としての魅力をひろめるべく、快適な旅行のための攻略法と代表的な見どころを2回に分けてご紹介していきます。


準備1:何はなくともインターネット

慣れない土地ではスマートフォンとネット環境の準備が必須です。後述するさまざまなアプリを制約なく使うためにも、中国でネットを使える環境を整えておきましょう。

中国で日本と同様にインターネットを使うには、

  1. 日本のスマホ/SIMをそのまま使うローミング
  2. レンタルWiFiルーターの利用
  3. SIMを購入
という3つの手段があります。それぞれご説明しますが、おすすめはダンゼン③です。

中国では規制によりFacebookやLINEなどのSNSはもちろん、GmailやGoogleマップといったGoogleの提供する各種サービスも使えません。現地ではカフェやホテルなど多くの場所にWiFiが通じていますが、このような規制によってほとんど使い物になりません。Google Playすら立ち上がらないのでAndroidの場合はアプリのインストールができないという事態に陥ります。そのため、日本や香港など中国国外からのインターネット接続サービス(データローミング)を通じてネットを利用する必要があります。

まずは①のローミング。大手キャリア(ドコモ、au、SoftBank)はいずれも定額制の海外データローミングサービスを提供しています。たとえばNTTドコモの場合は「海外パケホーダイ」auは「海外ダブル定額」SoftBankの場合は「海外パケットし放題」といった名称です。手軽に利用できますが、1日に2000円程度かかるなど割高です。また、利用条件も確認しておきましょう。海外データローミングはこうした定額サービスを使わない場合には非常に高額となります。

上記のサービスとは別に、ドコモは「パケットパック海外オプション」auは「世界データ定額」という1日980円で接続できるサービスがあります。通常のローミングよりは割安ですが、事前申し込みが必要であったり、専用アプリのダウンロードが必要だったりします。

①は料金が相対的に高いのが難点ですが、もっとも気軽に使うことができ、日本の電話番号がそのまま使えるのはメリットです。日本で格安SIMをご契約の場合、定額制の海外データ通信サービスを提供していない場合もあるようですので、契約している通信会社に確認しておきましょう。

②のレンタルWiFiルーターですが、中国の場合はあまりおすすめしません。VPNという手段で中国の規制をかいくぐるものが多いようですが、中国側もVPNのチェック&無効化を進めており、確実に利用できるという保証はありません。ルーターの受取や返却の手間もありますし、スマホとルーターをそれぞれ持ち歩くのも面倒で(それぞれのモバイルバッテリーを持ち歩くとさらに荷物が嵩みます)、そもそも値段がそれほど安くありません。いつものスマホをWiFi接続だけすることで手軽に利用できるのが最大のメリットです。

例外的に、エクスコム株式会社が運営する「イモトのWi-Fi」はVPNとは異なる「中国プレミアム回線」を提供しており、安定してSNSやGoogleなども利用できるようです。

もっともおすすめできるのは③のSIMを買うことです。amazonなどで中国7日間、中国10日間使い放題といったSIMが売られており、価格も一週間で1000円~と激安です。こうしたSIMは香港やタイなどを経由してローミングしているため、LINEやFacebookなどのSNSも問題なく利用できます。ドコモなど大手キャリアを経由して購入したスマホの場合は、事前にSIMロックを解除しておきましょう。

(香港ローミングのChina Unicomカード)

Amazon.co.jpで売られている中国用SIM

なお、都会にしか行かないのでWiFiで大丈夫だろうとお考えの方も要注意。中国でのWiFi利用には現地の電話番号入力を求められることが多く、外国人は一般に中国の電話番号が付与されたSIMカードを購入することができないためです。また、現地に入って海外ローミングができるSIMカードを買うことも困難です。日本にいるうちに、確実に携帯電波をキャッチできる環境を整えていきましょう。

中国の電話番号が付与されたSIMカードを購入することができないとしたら現地の方とどのように連絡をとればいいのでしょうか。中国ではLINEもFacebookメッセンジャーも使えませんが、WeChatと呼ばれるメッセンジャーソフトが普及しておりこちらを利用します。WeChatについては後述します。


準備2:必須のアプリ

(1) 通訳・翻訳アプリ

繰り返しになりますが、中国ではほとんど英語が通じません。そのため何かを尋ねたり質問に答えたりする時など、意思疎通にはなんらかのツールが必要となります。
幸い現在はスマホの翻訳ツールがあります。現地の人々も普通に外国人とのやりとりに使っており、我々旅行者が使ってもイライラされたり戸惑われたりすることはありません。

メジャーなアプリはご存じGoogle翻訳です。Google翻訳はオフラインでも利用することができます。ネット接続が不安定な場所でも翻訳機能を使うことができますので、事前に必要なオフライン用の言語ファイルをダウンロードしておきましょう。
Google Play
Apple Store

中国語の翻訳精度に秀でているのは百度翻訳です。さすが中国製のソフトだけあり、日中翻訳の精度はGoogle翻訳もかなわないほど。こちらもインストールしておくと良いでしょう。
百度翻译APP

ポケトークなどの専用デバイスがあれば一層便利ですね。

英語の通じにくい中国ですが、漢字文化圏であり掲示や看板の意味がわかりやすいのは救いです。中国本土では簡体字という日本とはまた異なる漢字体系を採用していますが、日本人であればなんとか意味が読み取れるでしょう。漢字だけでの筆談も(日本の漢字であっても)結構通じるものです。

何か現地の人に尋ねたい時や言っていることがわからない時など、スマホの百度翻訳画面を差し出せばアプリの翻訳機能を使って説明してくれることも多いです。そういった場合に備えて忘れずに簡体字の言語セットをインストールしておきましょう。iPhoneの場合は、「設定」→「一般」→「キーボード」から「新しいキーボードを追加…」を選択します。
Androidの場合にはGoogle Pinyin Inputをインストールします。

(2) WeChat

WeChatは微信(ウェイシン)ともいいます。
LINEに似たメッセンジャー的なツールなのですが(アプリのテーマカラーが緑なのも同じ)、ライドシェアの配車や決済など様々な機能が統合されており、大げさではなく中国ではWeChatがないと生活に支障が出るレベルにまで普及しています。

WeChatの便利な機能をフル活用するには現地の電話番号や銀行口座が必要だったりするのですが、我々のような旅行者にとっても便利な存在です。たとえば宿のスタッフに連絡先を伝えたりする際、外国人は現地の電話番号を持つことが難しいため、WeChatのIDを伝えるのが確実です。

また、ショップでは割引やクーポンなどのさまざまなキャンペーンがWeChatを通じて提供されていますが、多くの場合はWeChatのQRコードをスキャンしてそのショップや企業を友達登録するという手順になります。このあたりもLINEと似ていますね。

(QRコードをスキャンすることによって友達を追加したり、ショップのキャンペーン情報を見たり、決済をしたりなどさまざまな機能を利用できる)

Google Play
Apple Store

後述しますがWeChatで最も便利な機能はオンライン決済ツールのWeChat Payです。現在のところは中国国内に銀行口座がないと利用できないのですが、海外のクレジットカードからチャージできるよう準備を進めているようです。

(3) Trip.com

Trip.comは中国で必要というよりも、むしろ旅行の計画段階で便利なサービスです。Trip.comは中国最大手のオンライン旅行サービスで、かつてはCtripという名で知られていました。2016年に航空券検索比較サイトのSkyscannerを買収したことで世界に名をとどろかせました。

Trip.comのアプリではホテル、航空券、鉄道の予約を行うことができます。特にホテルの充実度はすばらしく、ExpediaやHotels.comといった競合サイトも比較にならないほどの件数がヒットします。航空券もSkyscanner譲りの高精度検索、鉄道も中国各都市の路線を網羅しており、少なくとも中国国内の旅行ブッキングにおいては穴のないサービスです。

ホテルや鉄道予約をすると、タクシー運転手や駅の販売係に見せるだけで通じるカードを表示してくれるのも地味に便利です。

(ホテルのカードを表示してくれる)

注意すべき点は、宿の網羅度が高すぎるため、外国人がほとんど泊まらないような小規模のものまで載っていることです。こうした宿ではフロントで英語が通じないのはもちろんのこと、決済も現金やQRコードのみといった物件も多いです。また、サービスアパートメントのような通常のホテルではないものもヒットするのですが、こちらはチェックインやカギの受け渡しなどである程度の語学力も要求されます。その点ExpediaやHotels.comでヒットする物件は外国人の利用が想定されているので、不安な方はそうしたサービスを使った方が無難かもしれません。
Google Play
Apple Store

(4) 地図アプリ

地図アプリといえばGoogleマップ、またはiPhoneの場合はAppleの地図アプリを利用されている方が多いと思いますが、中国ではあまり使い物になりません。まったく使えないというほどではないのですが、住所情報がかなりいい加減で訂正もほとんど行われていないようです。

中国で現地の方にも浸透している地図アプリは百度地図、または高徳地図です。いずれも正確かつ精密で、ルート検索や乗り換え案内などGoogleマップ同様の機能を備えています。タクシーに乗ったときにも地図アプリの画面を差し出せば一言の中国語会話も必要ありません。

(南京市中心部のほぼ同じエリアを表示したところ;左が百度地図、右がGoogleマップで、情報の密度が段違い)

飲食店などの評価が見られるのもGoogleマップ同様で、良店探しに役立ちます。
Google Play
百度地図
高徳地図
Apple Store
百度地図
高徳地図


準備3:お金と支払い手段

(1) 銀聯カード


(銀聯マーク)

中国ではVISA、マスターといった国際クレジットカードが使えるお店は高級店や外国人の多いレストランなどに限られます。日常の買い物ではほぼ使えないと考えて良いでしょう。

代わりに幅をきかせているのが銀聯カード(インリェンカード;Union Pay Card)です。銀聯カードは中国で最もメジャーなクレジットカードで、日本でも三井住友や三菱UFJニコスから発行されています。クレディセゾンはプリペイド形式の銀聯カードNEO MONEYを発行しています。

発行まである程度の時間がかかりますが、これ一枚あればホテルのデポジットも大きな買い物もOK。中国での安心感は絶大です。定期的な渡航の予定がある方なら用意しておいて損はありません。



三井住友カード 銀聯カード(ぎんれんカード)
MUFGカード 銀聯カード(ぎんれんカード)

(2) スマホ決済

お聞きになったこともあるかと思いますが、中国はQRコードによるキャッシュレス決済がひろく浸透しています。

レジにはQRコートの描かれた紙が掲げてあり、決済サービスは緑色のWeChat Pay(微信支付)または青色のAliPay(支付宝)のほぼ2択となっています。今や日本のコンビニでも見かけますね。

WeChat PayとAliPayの両方を使える店が多いですが、印象としてはWeChat Payの方が普及しているように思えます。


(Photo By N509FZ, Support Alipay and WeChat Pay, this is a CPC Merit. CC BY-SA 4.0)

実際には現金さえあればそれほど困ることはないのですが、100元札を出すと露骨に嫌がられたり、おつりがないと言われたり、信じられないほど汚いぐちゃぐちゃの1元札を返されたりとあまりスマートではありません。特にタクシーではおつりの持ち合わせがなくもたつくことがあります。

QRコード決済はネット通販や各種サービスの申し込みにも広く利用されており、たとえば観光地の入場パスなどもネットで予約、オンラインで決済という流れが定着していいます。日本人は当然QRコードでの決済ができないので、入場枠が先着の中国人観光客のみで埋まってしまい、せっかく行ったのにチケットすら買えないという事態が地味に問題化していたりします。

店頭でもさまざまなキャンペーンの結果通販サイトから買った方がお得だよと言われることもあり(ブランドによっては店舗が完全にショールーム化していたりします)、そうした場合にスマホ決済が利用できないと悔しい思いをします。

そんなQRコード決済、これまでは中国国内に銀行口座がないと利用できませんでした。以前は中国人から送金してもらうなどしてチャージする方法もあったのですがそれすら封じられ、事実上外国人が利用できない状態でした。

しかし朗報です。この11月にAliPay(支付宝)がいち早く海外キャッシュカードでのチャージに対応しました。また、WechatPayも同様のサービス開始をアナウンスしており、外国人への門戸が開かれることとなりました。中国に行くなら必ずAliPayをインストールして行きましょう。
AliPay Google Play
AliPay Apple Store

AliPayでは、「Tour Pass」というアプリ内の機能で海外クレジットカードからのチャージを実現しています。AliPayの検索窓から「Tour Pass」と検索すると該当画面が現れます。Tour Passは上海銀行のデビットカードという体裁をとっており、クレジットカードからそのデビットカードにチャージするという仕組みになっています。チャージ上限は2000元、チャージ金額は90日間有効で、期限を過ぎると返金されるので安心です。登録にはパスポートの写真が必要となります。チャージには本来一定の手数料がかかるようですが、2019年12月31日までは無料となっています。

(Tour Passを使って日本のクレジットカードから無事100元のチャージに成功)

Tour Passの利用方法については以下のリンクをご参照下さい。
アリペイ、海外から中国を訪れる旅行客も利用可能に!
アリペイ(支付宝)が日本のクレジットカードからチャージ&使用可能に。詳しいやり方は?

(3) 現金も大事

銀聯カードが使えない場所もありますし、何かの拍子にQRコード決済ができなくなるかもしれません。やはり最低限の現金は必要です。

両替は日本国内でも可能ですが、レートは中国国内の方がよいです。日本出国時は最低限(例えば空港からホテルまでの移動費程度)の金額だけ用意しておいて、実際に使う分は市街の中国銀行などで両替するのがよいでしょう。

クレジットカードでのキャッシングも便利ですが、街によっては海外クレジットカードに対応したATMが不足している場合があります(最近は特にモバイル決済に特化した端末に更新が進んでいる模様)。最悪日本円であっても現金があれば両替可能ですので、最低限のお金を持参することをおすすめします。筆者はかつて日本円すらろくに持たずに現地に行ったため、ATMを探して半日費やしたり、日系のホテルに助けを求めて宿泊する代わりにクレジットカードのショッピング枠から人民元を融通してもらったりと、さんざん苦労した経験があります。


最後に:治安とトラブルについて

さて、情報武装とお金の準備ができれば、あとは中国旅行の準備も万端です。

冒頭に課題として挙げた街路の広さや店員が怖い問題も、正確な地図アプリやタクシーの積極利用、翻訳ソフトの活用でかなり軽減されるのではないかと思います。警官が多いのは治安の良さの証でもあり、市街はディストピア小説を思わせる監視カメラだらけ。こうしたことが抑止力になっているのか、中国では盗難含め旅行者がよく会うような犯罪に巻き込まれる可能性は比較的低いと思われます。

肩の力を抜いて、柔軟な心でぞんぶんに中国旅行を楽しみましょう。


次回は、おすすめの街や観光地をご紹介します。