「タビノート」下川裕治:第26回 中国人の動きがエアアジア運賃を決める?

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 バンコクから香港に行く。安い運賃の航空会社となると、少し難しい選択になる。エアアジアが就航しているのだが、その運賃が割高なのだ。時期にもよるが、キャセイパシフィック航空やタイ国際航空のキャンペーン料金とあまり変わらないことが多い。
 そこでその近隣へのフライトをみてみる。マカオと深せんである。マカオから香港へはフェリーで1時間ほど。深せんから香港へはバスで2時間ほど。どちらもイミグレーションを通ることになるが、その運賃を考えると、かなりのお得感があった。なにしろ、バンコクー香港間のエアアジアの運賃の半額から3分の1ほどの運賃になるのだ。
 バンコクから香港に行くことになった。当然、マカオか深せんという選択になるのだが、深せんの運賃を見て、
「ついに深せんも……」
 と呟いてしまった。高いのだ。日程によっては、香港線より高い日もある。マカオしか残っていなかった。往復で1万5000円ほどになった。深せん運賃の3分の1である。
 マカオと香港に滞在して、この運賃の動きの理由がわかってきた。中国人だった。
 中国は政府の政策で、0元ツアーなどの格安ツアーが禁止になり、やや下火になってきたといわれる。しかしもともと規模が大きいから、まだ多くの中国人がバンコクにやってくる。
 中国からバンコクに来る場合、深せん空港まで国内線でやってきて、深せんからバンコクまでエアアジアを使うの方法が最も安かったはずだ。その利用者が増えたことで、深せん-バンコクの運賃が、香港-バンコク並みにあがったのだろう。中国本土から香港、マカオとなると、一応、国際線になる。運賃も高くなる。
 香港には中国人以外の需要もあるから、バンコク-香港線は、ある程度高くても、集客が望める。……といったわけで、マカオだけが残っているのだ。
 マカオにやってくる中国人を見ると、その大多数が陸路だという。つまり飛行機でマカオ空港に着く大陸の中国人は少数派。そんな理由が、バンコクーマカオ線の安さにつながっているようだった。
 つまりバンコクと香港、深せん、マカオを結ぶエアアジア運賃は、中国人に左右されていることになる。
 この路線に限らず、アジアのエアアジアの運賃を左右しているのは、実は中国人観光客の動き方なのかもしれない。

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マカオ空港に着いたエアアジア。歩いてターミナルに向かう。LCCですから