「タビノート」下川裕治:第95回 荷物代は約5550円

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 チケットをとったのは当日だった。台北から東京に戻る便だった。仕事がたて込み、いつ戻ることができるかわからなかった。移動中、ときどき運賃はチェックしていた。変動はなかった。
「たぶん、空港で買っても同じ運賃だろうな」
 そんな気がした。LCCの便数が多い路線は直前になっても運賃変動がないことが多い。搭乗日が近づくと運賃があがる、という傾向は薄れつつある。タイの国内線では、しばしば空港で航空券を買っている。
 しかし運賃が変わらないという保証はない。席がなくなる可能性もある。ついつい事前にネットで買ってしまう。
 台北から東京への片道航空券。スクートが安かった。スカイスキャナーからアクセスした。最安値をつけていたのはトリップ・ドットコムだった。1万円強だった。
 以前にも伝えたが、最近、インターネット系の旅行会社のサイトを通して買うと、預ける荷物登録がスルーされてしまう。預ける人が少ないからだろう。たしかにこの方が早く予約が完了する。しかしこのときは預ける荷物があった。トリップ・ドットコムで予約を進めると、やはり荷物登録がなかった。完了直前にスクートのサイトに切り替えた。航空会社のサイトなら、荷物登録はあるはずだった。
 トリップ・ドットコムの運賃に比べ、スクートは2000円ほど高かった。しかし荷物登録をせずに空港に向かい、チェックイン時に預けると、荷物代が高くなる。
 ところがスクートのサイトの予約がスムーズに進まない。途中で止まってしまい、最初に戻るように指示がでる。
 どうしようか。時間があまりなかった。
 しかたなくトリップ・ドットコムで航空券を買った。この場合、予約完了後、スクートのサイトにアクセスし、荷物登録をすることになる。打ち合わせを終え、空港に急ぐ。乗った電車のなかで、スクートのサイトにつなぐのだが、なかなか登録ができない。
 そうこうしているうちに、電車は空港に着いてしまった。しかたない。チェックイン時に荷物を預けるしかない。
スクートのチェックインはエバー航空のスタッフが受けもっていた。
「荷物の登録がありません。別のカウンターで支払って、もう一度、ここに……」
 そういわれ書類を渡された。エバー航空の支払いカウンターに書類を出した。
「1500元です」
「はッ?」
 日本円で約5550円。
 こんなに高くなってしまうのか。これではスクートを選んだ意味がないような気もした。
「ひょっとしたら、空港でチケットを買った方が安くなったかも……」
 しかしその勇気はまだない。


スクートも機材が小型化傾向。エアバス320が多くなった