「タビノート」下川裕治:第92回 LCC専用ターミナルが消えた

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 久しぶりに日本の国内線LCCに乗った。東京から那覇までのバニラエアだった。海外に出ることが多く、国内移動が減っている。乗ってもマイルを使った無料航空券が多かった。
 1年ぶりぐらいだろうか。その間にずいぶん変わっていた。
 東京駅から成田空港への格安バスのルートも変わっていた。以前は第2ターミナル、第1ターミナル、第3ターミナルの順だったが、国内線LCC用の第3ターミナルが最初になった。
 予約はIT系旅行会社を通した。9000円ほどだったが、予約の際、預ける荷物や座席指定がなかった。今回は那覇からバンコクに向かうから、預ける荷物がある。届いたメールを見ると、チェックインカウンターで支払うように書かれていた。
 当日、チェックイン時に預けると、4000円が必要だった。ちょっと高い。調べると、バニラエアのサイトで買うと安くなった。予約時にバニラエアもあったが、IT系旅行会社の方が安かった。どちらが得? 微妙なところだ。
 IT系旅行会社の予約は、年を追って簡単になっていく。国内線はその傾向が強い。荷物を預ける人も少なく、飛行時間も長くないから座席へのこだわりも薄い。そこを省略してしまうという発想だろう。
 予約のスムーズさはIT系旅行会社の命といってもいい。簡単であることが売りあげにつながるのだろう。
 那覇空港も大きく変わっていた。国内線と国際線のターミナルがつながり、その間に新しい国内線用の搭乗口もできた。バニラエアはそこに着いた。
 那覇空港には、日本で唯一、LCC専用ターミナルがあった。倉庫をつかったもので、ピーチ・アビエーションとバニラエアが使っていた。そこが国内線ターミナルに統合された。LCC専用ターミナルは消えてしまったわけだ。
 今年の3月のことだったという。
 それを進化といっていいのかはわからないが、国内線LCCは少しずつ変化していた。1年ぶりだというのに、戸惑うことも多かった。やはりこれは進化というべきなのだろう。


那覇空港。国内線と国際線がつながり、大きな空港になった