「タビノート」下川裕治:第77回 中国版の中間航空会社の時代

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 昨年(2017年)の12月、新疆ウイグル自治区に出かけた。往路は日本で予約し、帰路は現地でとった。スカイスキャナーを通したネット予約だった。
 その画面を見ながらMCLの時代を感じていた。
 MCL──。一般的な呼び方ではない。僕が勝手に命名した航空会社グループである。意味はLCCとレガシーキャリアの中間。これからこのグループが路線を増やしていく気がする。
 東京から西安までの便を探した。中国国際航空か中国東方航空あたりになるかと予測していたが、最安値をつけてきたのは天津航空だった。天津に頻繁に出向く知人によると、天津では、「LCCより安い」ということで話題になっているという。
 天津航空は運行開始が10年ほど前という新しい航空会社だ。中国国内線に次いで、2015年には日本への就航をはじめている。
 羽田空港を午前2時台に出発するというつらい時間帯だった。空港のチェックインカウンターで眺めると、乗客はほとんどが中国人だった。日本での知名度はまだ高くない。天津から西安までは首都航空の機材だった。
 荷物を預ける料金もかからず、機内食も出る。天津までの機材にはシートテレビがつき、本数こそ少ないが日本の映画も観ることができた。
 レガシーキャリアとの違い……。便数の少なさや運行時間の悪さぐらいだ。しかし西安まで片道で3万円台の運賃を出していた。
 復路はカシュガルからだった。検索すると四川航空が最も安かった。成都で1泊が必要で、成都から東京までは隔日というスケジュールだった。
 この便はトラブルがあった。カシュガルから成都までの便が欠航になってしまったのだ。こういうとき、便数の少ない航空会社の欠点が露出する。どうしても日本に予定日に帰国しなければいけない事情があり、中国国際航空の便を買ったが。
 天津航空、成都航空……。ともに中国では第2グループの航空会社群である。このグループで、日本にかかわる航空会社には、ほかに香港航空、上海航空、吉祥航空などがある。中国の航空会社は、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空、海南航空の4大グループに集約されつつある。第2グループの航空会社の多くは、このグループに属している。しかし独自の運賃を打ち出している。その運賃はときにLCCと拮抗するが、一般的には中間クラス。しかし機内サービスなどはレガシーキャリアと同じだ。
 中国の航空会社のサービスはほかの国と比べるとかなり低いが、中国なりのヒエラルキーはつくられつつある。日本人もお世話になる機会が増える気がする。


成都から東京に向かう四川航空。中国人の個人客が圧倒的に多い