「タビノート」下川裕治:第14回 LCCのチケットを買う前に地図を見る

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shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

 LCCを使いこなすためには、さまざまな方法がある。そのひとつが、現地の地理に強くなることだと思う。「空飛ぶ路線バス」を標榜するLCCは、かなり小さな町へのフライトがある。そのなかには、日本人には馴染みのない町も多い。その位置を頭のなかに描くことができるか……。ひとつのポイントである。
 昨年(2013年)の末、北部タイのナンからバンコクに戻ろうとしていた。調べると、タイのLCCであるノックエアが就航していた。
 サイトを開いた。ノックエアの運賃は、プロモーション、ノックエコ、ノックフレキシーに分かれている。プロモーションが最も安く、ノックフレキシーがいちばん高い。
 見るとノックエコは売り切れ。3000バーツ台のノックフレキシーしか席が残っていなかった。
「う~ん、ちょっと高い……」
 腕を組んだ。おぼろげなタイの地図を頭に描く。ナン県の南にはプレー県があったような気がする。そこにLCCは就航しているだろうか。
 ネットでタイの地図を出してみる。たしかにナン県の南にプレー県がある。そしてその中心であるプレーの街の近くに、空港のマークが記されていた。
「いけるかもしれない」
 調べると、やはりノックエアが、1日1便だけ就航していた。そしてノックエコに席があり、2400バーツ代だった。600バーツ、1800円ほど安くなる。タイで600バーツがあれば、ホテルに1泊できる。プレーからバンコクに戻る航空券を買った。
 僕はラオスからタイに入った。国境からナンまではロットゥーという乗り合いバスで移動した。到着したナンのバスターミナルでプレーまでの行き方を訊いた。
「すぐにロットゥーが出ます。運賃は78バーツ。1時間ほどで着きます」
 うまくいった。プレーからバンコクに向かうLCCを利用して、500バーツ以上、安くあげることができた。
 LCCの航空券を買う前に、現地の地図を見ておく。ひとつのコツである。

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プレー空港。ノックエアが1日1便。小さな空港だ