新型コロナウィルスと戦う、フランスはいま

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吉田恵理子

吉田恵理子

吉田恵理子(よしだ・えりこ)
ワイン&フードライター。パリ在住。フランス国立ランス大学高等美食学研究院ディプロム取得。英国ワイン&スピリッツ教育財団(WSET)アドヴァンスト、ロンドン酒ソムリエアソシエーション認定酒ソムリエ。著書に『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)。趣味は映画と読書、美術館訪問。

こんにちは、フランス パリに在住のライター吉田です。
ヨーロッパ全土がコロナウィルスの脅威におびえる現在、フランスでも17日正午より全土で最低2週間の外出禁止措置が出ています。
私の住む地区は18区モンマルトルの近くですが、いつも観光客でにぎわう界隈も、まるでゴーストタウンのように静まり返っています。サクレクール寺院の前も、ほぼ人がいません。

今回の措置に至るまでは、段階的に様々な措置が取られました。

まず、9日には1000人以上が集まる場の禁止。これにより、ルーブル美術館やオルセー美術館などが入場制限を実施。
1000人に満たないオルセー美術館とはどんなものかと確認のため訪れました。いつも大混雑の印象派やゴーギャンの部屋も、ゆったりしていました。

13日には100人以上が集まる場を禁止。これにより、ほぼすべての美術館や劇場が閉鎖、コンサートなどが中止に。

そして15日深夜0時からはカフェ、レストラン、バー、ディスコ、映画館に最低1ヶ月の閉鎖命令が出ました。なんと14日夜8時に通知が出て、たったの4時間で客がいるにも関わらず、閉鎖しなくてはならないという強行措置。
私の夫はレストランで勤務する料理人ですので、その連絡をもらってすぐにレストランの片付けに駆り出されました。
いつもテラスにひとがいっぱいのカフェも閉店。

全面外出禁止となるのもそう遠くないと思い、急遽近所のスーパーへ買い出しに行きました。この時点で、トイレットペーパーとパスタの棚はほぼ空に。パスタはフランスでは緊急時によく購入される食材です。

この飲食店閉鎖命令を受け、パリの人々がしたこといえば?春の陽気の中のピクニックとお散歩です。カフェやレストランで集まれないなら、公園でピクニックすればいいじゃない?とばかりに、パリの公園各所やセーヌ河岸などにたくさんの人が集いました。日本と違い、自粛の概念はおそらくないのです。

あと、ご存知の方も多いかと思いますが、フランスでは普通の挨拶が握手もしくはビズ(頬にするキス)であり、挨拶ですでに濃厚接触です。しかも、日本ほど手洗いやうがいをする習慣がありません。私は医療に詳しい立場ではないのですが、感染者数が急激に増えるのも仕方ないと思わざるを得ません。

そして、16日20時にエマニュエル・マクロン大統領により全面外出禁止の発表。17日正午より実施となり、当日は朝からスーパーや郵便局で長蛇の列ができていました。

この日より、保育園から大学まですべての教育機関が閉鎖。学生はインターネットによる遠隔授業などを受けることになりました。

また、長期の外出禁止を避けたいパリの人々が、車や電車で地方に逃げるという現象も。地方行きの電車の本数を極端に減らしているため、モンパルナス駅などパリの鉄道駅は、人でごった返していたそうです。なお、パリから多くのひとがやってきた地方の人々は、ウィルスを持ってきたのではないかと恐れているとも報道されています。

現在、外出が厳しく制限されていますが、テレワークが不可能な人の通勤、また一般の生活に必要な買い物、病院に行く、個人で家の近くで運動をする(ランニングやウォーキング)、犬の散歩などは許可証さえ携帯すれば可能です。許可証はフランス内務省のウェブサイトからダウンロードでき、それに必要事項を書き込むだけでOK。ただし、携帯していないと最低135ユーロの罰金が徴収されます。

食料品を売る商店は店を開けることを許可されており、スーパーはもちろん、肉屋や八百屋、そしてフランス人の生活に不可欠のパン屋も開いており、食べるものに困る状況ではありません。農業大国のフランスは、意地でも国民の前から食料を絶やすことはないでしょう。

多くはありませんが、ワインショップも開いています。ワインもフランス人にとっても大切な食料のひとつ。私が訪れた店では、店内に入るのは3人までと表記がありました。商店では、人と最低1メートルの間隔を開けるように指示がされています。

今回の措置で、やっと状況の大変さに気づいたであろうパリの人々。テレビ演説の中で、マクロン大統領は6回も「私達はウィルスとの戦争状態にある」と言い、街中でビズの挨拶をするひとも見なくなり、マスクをする人も増えました。
今回の外出禁止措置の間に、状況が改善すればと祈るばかりです。