ウラジオストク子連れ旅 その1

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大泉りか

大泉りか

大泉りか(おおいずみ・りか)
作家、コラムニスト。04年に「ファック・ミー・テンダー」(講談社)でデビュー。その後、ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や育児などをテーマとしたコラムを多く手掛ける。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮らして14年目の犬飼い。現在、もうすぐ2歳になる息子の育児中。Twitter ID:@ame_rika

 子連れ旅にはいくつかのハードルがあります。おまけにそのハードルは、子ども年齢によって変わっていくので、毎回が挑戦の連続なのです。例えば、立つことのできない月齢の赤ちゃんならば、おむつの交換台のあるトイレや、授乳室があちこちにある国に行かないと、毎度のおむつ替えと授乳に苦労することになるし、逆につかまり立ちが出来る月齢になれば、おむつ替えは楽になる一方で、代わりに子どもの食べ物や飲み物をどうするのかを考えなくてはなりません。けれど、小さな子どもがいたとしても、旅は辞められない……というわけで、2017年の1月に第一子の息子を出産。その年の6月には、台湾へ初海外旅行デビュー、同年11月に韓国に行き、そして、ようやく一歳の誕生日を迎えたところで考えたのは、「これまで、行ったことのない国に行きたい」ということでした。

 けれど、フライトのことを考えると、なかなかそれは難しくもあります。数時間のフライトで行けるアジア諸国は、産前にほぼ制覇してしまっている……と思っていたけれど、見落としがあったことに気がつきました。極東ロシアの一番端っこ、ウラジオストク。成田空港からは直行便があり、3時間足らずで到着できるといいます。おまけに2017年の夏にビザが緩和され、ネットで手軽に取得した簡易ビザで渡航できるというナイスタイミング。これは行くしかない! というわけで、2018年6月17日から20日まで、子連れでウラジオストクを旅した旅行記です。

2018年6月17日、日曜日。12時40分発、成田からのエアロフロート・ロシア航空でウラジオストクへと飛びました。フライト代は、大人1名の航空券42800円に加えて国内空港使用料が2610円、海外TAXが1100円。1歳半になる息子は航空券代のみ4300円かかりました。機体はプロペラ機です。フライト中、息子がおとなしくしていてくれるかを懸念していましたが、エンジンの振動が心地よかったのか、滑走路を助走中に寝てしまいました。ありがたい。機内食は出ないし、飲み物のサービスもノンアルコール飲料のみ。到着は16時35分の予定でしたが、少し早めの16時過ぎにはウラジオストク国際空港に到着。時差の関係は1時間。ウラジオストクが進んでいるので、3時間足らずで到着です。

空港から都市部まではやや距離があります。タクシーかバス、エクスプレスの3択ですが、1歳半で歩きたがりの子連れには、逃げ場のあるエクスプレスが使いやすい。事前にネットで調べた情報によると、空港から市内までのエクスプレスは一日に5便でおまけに最終は17時40分。あまり余裕はありません。

もうひとつの心配事は、両替の問題がありました。これまでの渡航経験者たちのブログによると、空港での両替所が閉まる時間がとにかく早いと書いてあります。万が一のためにクレジットカードを海外キャッシングできるように申し込んで対策をすることにしました。

果たして当日、スムーズにいくか少し緊張して臨みましたが、飛行機が少し早めに空港に到着した上に、空港で問題なく海外キャッシングも両替もすることができ、余裕で市内までのエアロエクスプレスも間に合いました。SIMカードも購入。4日間分5Gを購入。約400ルーブル(約700円※2018年6月)程度でした。


エアロエクスプレスの時刻表。左がウラジオストク駅から空港までの時刻表。左がウラジオストク出発時刻で右が空港到着時刻。黒いパネルを挟んで右側が空港からウラジオストク駅までの時刻表。右から二番目のマスが空港出発時刻で、一番右手がウラジオストク駅到着時刻。

エアロエクスプレスは、せっかくなのでビジネスクラスの座席を取りました。料金は360ルーブル。しかしビジネスといってもだいぶ質素です。車内に限らず、空港も電車の駅もそうですが、広告がほぼなく、殺風景。


窓の外はのどかな風景が続きます。ヨーロッパの田舎らしい村の景色や、沈んだ色の海を眺めているうちに、約一時間ほどでウラジオストク駅に到着しました。

エアロエクスプレスの駅はシベリア横断鉄道始発駅の、ウラジオストク駅から少し離れています。離れているといっても歩いて3分程度、その間の広場にはホットドッグの屋台が出ていました。


小腹が空いていたのでさっそくひとつ買って食べることに。ホットサンドのように潰されて焼かれていて、中には野菜がたっぷりで美味しかったです。


事前にエクスペディアで予約を入れておいたジェムチュジナホテルまで、グーグルマップで調べると500メートルほど。街の雰囲気を見たかったこともあり、歩いて向かうことにしましたが、すぐに後悔しました。急傾斜の坂道の連続で、おまけに歩道はボコボコ。ベビーカーにはかなりしんどい。


坂道に対してあくまでも建物はまっすぐに立っている。ので、一階部分が自然と犠牲となる。

息を切らしながらホテルへと到着。すでに6時を過ぎているけれど、まだ外は昼間のように明るいです。少し休憩して、今夜の晩御飯を食べる予定のレストランのある噴水通りへと向かうことにしました。

子連れ旅のネックのひとつが移動です。身軽であれば、バスに乗ったり、街を探索がてら歩くのも楽しいけれど、子どもがいると、なかなかしんどい。なのでタクシー移動をメインにしようと考えていたのですが、なんせ、ロシア語圏。不安しかありません。スマホで行先を指定できるUberが参入していれば便利なのだけど……と思って調べた結果、Uberはないものの、Gettという配車サービスを発見。事前にアプリを入れて、クレジットカードまで登録しておきました。

Gett  https://gett.com/uk/

さっそくホテルから噴水通りまでの配車をリクエストすると、すぐに車が見つかり、10分ほどで到着すると案内が出ました。ホテルの前で待っていると、トヨタのプリウスが到着。乗車して10分ほどの距離で噴水通りまで到着し、料金は249ルーブル(430円程度※2018年6月)でした。後から判明したことですが、Gettを利用するのに、249ルーブルが最低料金として設定されているようです。


噴水通りは閑散としていました。ガイドブックなどでは「一番のオシャレスポット」となっていますが、なぜこんなにもひとけがないのか……と思って時計を見たらもう夜の20時を過ぎていることが判明。陽が高すぎて、すでに夜になっているとは気が付きませんでした。


ミニスーパーには缶詰やバター類が充実。主婦的にはテンションがあがります。


あまり寝るのが遅くなっても明日に響くので、あらかじめ調べてあったレストラン『Svoy Fete』にイン。レストランといってもカフェ風で温かみがありつつも、日本標準からすると、十分にオシャレな内装です。子連れで大丈夫かと心配しながら「子供がいるけど大丈夫か」と片言の英語と身振り手振りで確認。特に問題なく奥に通されたら、そこにはなんと、キッズスペースが!


日本のレストランでキッズスペースがあるとすれば、それはフードコートやファストフード、キッズカフェと言われる子連れ向けの店くらいありません。ゆえに多くの母親は「たまには、おしゃれな店で、美味しいものが食べたい」と思いながらもなかなか叶わないでいるのですが、極東のこの店なら叶う。


しかもお値段はリーズナブル。ニシンの酢漬けの前菜と、ボルシチ、ポルチーニが濃厚に香るビーフストロガノフ、ズワイガニのハンバーグにワインを1本開けて3050ルーブル(約5500円)でした。


息子は野菜たっぷりのボルシチと、ビーフストノガノフの下のマッシュポテト、パンをがつがつ食べていました。どれも優しい味なので1歳半でまったく問題はありません。ロシア、意外と子連れに優しいかも……。(つづく)