下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治
またしても沖縄行きのジェットスターに乗ってしまった。最近、沖縄に仕事が多いためだが、前回は早朝の6時10分という過激な時刻に成田を離陸する便だった。
しかし今回は8時20分発。しかし片道5000円台だった。この運賃なら、8時台を選ぶ。
この便は日本航空とのコードシェア便だった。6月末には、バニラエアに全日空のマイルで乗ることができるようになるという発表もあった。
日本航空とジェットスター、全日空とバニラエアとピーチ・アビエーション。この関係はしだいに親密になりつつある。
理由はLCCの伸び悩みである。楽天やJTBが参入するなど、LCCの周辺は賑やかだが、経営がうまくいっているわけではない。ジェットスター、バニラエアなどは搭乗率がそれほど高くない。LCCの場合は、搭乗率が8割を超えないと厳しいという不文律がある。そこには及んでいないのだ。
親会社の日本航空や全日空とのコードシェアやマイルを使うことができる話は、LCCのテコ入れだと思っていい。なんとか搭乗率をあげようとしているのだ。
そこに見えるのは、航空業界のひとつの流れだろうか。
日本人のなかには、LCCを嫌う人が少なくない。キャンセルや変更の難しさ、座席の狭さ……など、削られたサービスの部分が気になる人たちだ。
アジアの場合、LCCがうまくいっている理由に、増え続ける富裕層がLCCを使うことがある。参入するとき、警戒する既存の航空会社に、LCCはこう説明するといわれている。
「既存の飛行機に乗っている人がLCCに乗るのではありません。いままでバスに乗っていた人がLCCに乗るんです」
たしかにそんな面はある。しかし実際は、富裕層がいちばん使っている。バスといっても、VIPバスのような高級バスに乗っていた人がLCCに移ったわけだ。エアコンのないバスに乗っていた人が、いきなりLCCにステップアップはしない。
しかし日本は、LCC導入前に、国内線はかなり発達してしまっていた。彼らはLCCに抵抗感がある。
しかしそんなことはいっていられない空気が航空業界にはある。その予感が、コードシェアやマイルの共有から伝わってきてしまうのだ。
中距離路線はLCCという流れは、すでに敷かれつつある気がする。つまり中距離路線から、既存航空会社が撤退していく流れである。長距離は既存航空会社、短距離はLCCという住み分けは、実際、世界各地で起きている。
日本国内線はそのほとんどがLCCという時代は、そう遠くないという人もいる。LCCを嫌っても、日本の空にはLCCしか飛ばない時代。そのためには、LCCを嫌ってばかりはいられない気がする。