下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
LCCにこだわっているわけではないが、ミャンマーのLCCと訊かれると霧のなかに入っていってしまう。エア・カンボーザ、ゴールデン・ミャンマー・エアラインズ、マンダレー航空などに、ミャンマー国内で何回か乗ったが、はたしてLCCかといわれると……。ミャンマーの空港のチェックインカウンターに行くと、聞いたこともない航空会社のブースが出ているが、はたしてそれらがLCCかどうか……。昔ながらのプロペラ機が飛んでいるだけのようにも映る。
ヤンゴンからバンコクに戻る航空会社を検索していると、ミャンマー国際航空が頃合いの運賃を提示していた。これがLCC?
調べてみると、エア・カンボーザとミャンマー・ナショナル・エアウエイズが出資してできた航空会社だった。前者はミャンマーのLCCともいわれる航空会社、後者は旧ミャンマー国営航空である。
レガシーキャリアが子会社LCCをつくることは珍しくない。しかし出資の割合から見ると、エア・カンボーザの子会社と考えるのが妥当。とすると、ミャンマー国際航空というのはなんだろうか。
ヤンゴンとバンコクを結ぶLCCは、タイの航空会社が独占している感ある。タイ・ライオン・エア、ノックエア、タイ・エアアジア……。そこに参入したLCC?
予約はスムーズだった。インターネットで簡単に席が確保できた。どこかLCCのにおいがしたが、預ける荷物は無料だった。運賃は1万円強。少し高いか……。
機材はエアバス319だった。エアバス320が統一しようとするのがLCCだ。少し雰囲気が違う。座席の間隔も広かった。乗客はミャンマー人が多かった。それも中高年が目立つ。
ヤンゴンからバンコクまでは1時間半ほどだ。軽食だが機内食もでた。口に運びながら、「これはMCCでは?」
と思った。レガシーキャリアとLCCの中間クラス。僕が勝手にそう呼んでいる。
東南アジアはいま世界有数のLCC密集地だ。そこに参入するには……。エア・カンボーザも悩み、預ける荷物は無料にし、機内食は出しつつ、LCCのにおいをもたせるMCCに辿り着いたのではないか。
ミャンマー国際航空の機内食。通常の軽食よりちょっとレベルをあげた?