韓国・ソウル~ポンチャックディスコを探して~ その1

13回の渡韓を誇る旅の達人、官能小説家大泉りかさんによるソウル旅行記、前編です。
(注:本事例は2016年2月時点の予約可能なプランおよび費用にもとづいています。)

Profile
大泉りか

大泉りか

大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年、東京都練馬区生まれ。官能小説家、コラムニスト。スポーツ新聞や女性向けウェブサイトなどに連載多数。近著に『性感ヨガレッスン 柔肌美女に囲まれて』『誘惑カフェ 叔母・人妻・女子高生たちと蜜色バイト』(リアルドリーム文庫)、『サディスティック88』(小学館ガガガ文庫)のほかに、男性向けモテハウツー『もっとモテたいあなたに 女はこんな男に惚れる』(イーストプレス・文庫ぎんが堂)などの実用書も手がけている。
大泉りか公式ブログ http://blog.livedoor.jp/ame_rika/

 最も手軽に行ける海外といえば、なんといっても、お隣の国、韓国。羽田からソウルまでは約二時間半。食べ物もお酒も美味しいし、買い物だってたくさん出来る。夜遊びだって……と言いたいところですが、若者の集う最先端のクラブは昭和生まれのアラフォーには正直ちょっとつらい。なので、毎回、屋台でチヂミをツマミに朝までソジュ(焼酎)を飲んだくれるのが定番です。

 しかし、渡韓も通算13回目となればいい加減、なにか新しい刺激も欲しいところ。女四人での旅行となる今回、もっと夜を楽しんで過ごす方法はないのか。そう思っていた矢先、以前、済州や仁川で乗った遊覧船の中で観たポンチャックパーティーのことを思い出しました。

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 こちらは、仁川国際空港のある永宗島と月尾島の間の海域を周遊する遊覧船。16000ウォン(約1500円)※2016年2月現在

 通常、遊覧船といえば、景色を楽しむものだと思うのですが、済州や仁川の遊覧船はちょっと違います。船内では、出航する前から歌謡曲とテクノを混ぜたような、ポンチャックと呼ばれる韓国の大衆音楽が大音量でかかり、中高年の観光客たちが、踊り狂っているのです。

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 済州の遊覧船の中の様子。ペアルックスで決めた韓国のアジュンマ(オバサン)たちが楽しそうに盛り上がってます。

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こっちは仁川の遊覧船。カーテンをすべて閉め切り、外の風景など、皆さま、まるで興味がない。

 ポン・ジュノ監督作品の映画『母なる証明』にも、主人公の母が中年女性たちとともに、観光バスの中で踊り狂うシーンもあるように、韓国の中高年者はとにかくポンチャックで踊るのが大好き(ちなみに韓国人の友人に聞いたところ、観光バスの中で踊るのは危険だということで、現在では法律で禁止されているそうです)。

 これだけポンチャックで踊る文化が根付いているのならば、船やバスの中だけではなく街中にもポンチャックで踊れる店があるはず! というわけで、今回の旅の目的のひとつは、「ポンチャックの流れる中高年向けナイトクラブを探す」ということになりました。

 そうと決まったら、さっそくリサーチを。事前に韓国に住む友人(20代女子)にポンチャックナイトクラブがどこにあるのか知らないかを尋ねてみたところ、「ナイトクラブの早い時間には流れていそうだけど、具体的にどこって言われるとわからない。だって興味ないし」と心許ない返事が。まぁ、「今度、日本に行くんだけど、歌声喫茶ってどこにあるの?」と尋ねられてるのと同じことだと考えれば当然ですよね。

 仕方なく独力でリサーチを重ねたところ、ポンチャックの第一人者でもあるイ・パクサが清凉里駅のシデコリアというナイトクラブで過去ライブを行っていたことを発見。このシデコリアは、きっとポンチャックの流れるナイトクラブに違いない!というわけで、“清凉里駅のシデコリア”という情報のみで、韓国へと向かうこととなりました。

 ソウル到着初日。今回のホテルは梨泰院(イテウォン)です。米軍基地の近くに栄えた街なので、シャレたカフェやヒップなクラブなどがあることで有名ですが、意外と隠れてポンチャックナイトクラブがあったりしないものか。こういう時にはやっぱり地元の人に尋ねるのが一番だということで、裏路地にある食堂に入って聞いてみることに。

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 若者向けのコジャレた店の多い梨泰院ですが、一本裏手に入れば安いローカル食堂もあります。

 店員はすべてアジュンマ、客はアジョシ(オジサン)ばかりで、まさにポンチャック世代ど真ん中。しかし、「この辺りにポンチャックの流れるナイトクラブはないですか?」と尋ねても「この辺にはないね。っていうか、もうそんな店はないんじゃない? 地方だったら残ってるかもしれないけど」とのつれない返事。がっくりとうなだれるわたしたちを慰めようと思ったのか、店にあったラジカセでポンチャックをかけてくれました。優しい。

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 マッコリと豚キムチをいただきました。胡麻がアクセントになっていて、美味しかったです。

 このまま、『シデコリア』を探しに清凉里駅まで向かうという手もありましたが、実はこの日、我々が乗ったのは、羽田発 6:20のコリアンエアー720便。前日、徹夜な上に飛行機の中から呑み続けていたので、この辺りで撃沈。捜索は翌日に持ち越すことにして、近所にあるチムジルバンでホテルのチェックイン時間まで仮眠を取る事にしました。

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 イテウォンランドは、東大門などに比べてれば、地元の人が多く来るので、価格帯は安いです。メモを取っていないのでうろ覚えですが、たしか入浴料が6、7000ウォン。垢すりは20000ウォンくらいだったと思います。

 睡眠を取って酒を抜いたところで、初日の晩御飯はやっぱり焼肉しかない。というわけで、ソウルに来る度にほぼ定番となっている馬場洞(マジャンドン)畜産物市場にある焼肉横丁で食べることに。

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 馬場洞畜産物市場は、東大門からタクシーで10分から15分程度。アーケードの商店街のほとんどの店が精肉店です。

 ピンク色の照明に照らされた肉塊にファイティングスピッツをかきたてられます。出来ることならお土産に持って帰りたい!!!

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 奥が座敷になっていて、あがって食べられるお店も。ついつい入りたくなってしまいますが、目的地はもっと先にあります。

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 引きずり出したての臓物がそこらにあるので、ナイーブな人が注意が必要。写真はセンマイと白センマイとレバー。

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 アーケードを抜けたところにようやく発見。こちらが目的地の馬場洞の焼肉横丁です。たくさん店が並んでいますが、どこに入っても、メニューも味も値段もそう変わらない。外から見て混んでいる入れば間違いはありません。

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 馬場洞の名物はレバ刺しとセンマイ刺し。しかもお通しなんで、無料なんです。さらにはお替りもし放題。フリーレバー!フリーセンマイ!

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 写真の肉は盛り合わせ600グラムで60000ウォン。キムチや味噌チゲ、ご飯などはレバ、センマイ刺しと同じく無料でついてきます。

 隣の席に座っていた韓国人男性がワイルドにも、肉を焼かずにそのまま食べていたので思わず盗み見していたら「このまま食ってみろ」とばかりにトングで掴んだ生肉(焼く用のヤツです)を渡され、仕方なく生で食べました。それくらい新鮮ってことです。世の中は熟成肉ブームですが、捌きたてのフレッシュな肉もまた違った味わいで美味ですね。

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 明日、無事にポンチャックのナイトクラブは見つかるのでしょうか。後編に続く。