下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。
空港の運用の世界には波があるような気がしてならない。一時の上海の浦東空港。とにかく混み合っていることが搭乗口にいるとよくわかった。頻繁に搭乗口が変わった。多いときで4回変わったことがある。そのたびに空港のなかをどさどさと移動しなくてはなからなかった。出発遅れも頻繁だった。 「Delay」の表示が掲示板に並んでいた。飛行機に乗り込んでも、滑走路手前で待機することも多かった。
しかし最近の浦東空港は搭乗口の変更や遅延が少なくなった。利用便が減ったとは思えない。むしろ増えているかもしれない。おそらく空港の運用体制が整ってきたのだろう。それまで1年から2年。空港というものは、そういうサイクルで動く生き物のような気がしないでもない。
今年の8月。ベトナムのホーチミンシティ。タンソンニャット国際空港からダラットまでジェットスターパシフィックを使った。国内線だから1時間半前ぐらいに行けばいいだろう、と踏んでいたが、まずセキュリティチェックの前に長蛇の列。30分ぐらいかかってようやく通過できた。
搭乗待合室は椅子がみつからないほど混み合っていた。出発30分前だというのに、搭乗口がまだ表示されない。ときどき掲示板を見に行くと、「Delay」の文字がしばしば登場する。ボーディングブリッジを使う搭乗口はあいているのだが、徒歩で飛行機に向かう搭乗口は混み合っている。つまりLCC組だけがわさわさしている。LCCの搭乗口は30分間隔ぐらいで搭乗便が変わっていく。当然、遅れてやってくる乗客もいるわけで、そこでまたひと悶着。
空港の構造がLCCの登場に追いついていない。いや、予想より早くLCCの便が増えてしまったのか。
これでもタンソンニャット空港は、以前より使いやすくなった。しかしいつも、増える飛行機との追いかけっこが続いている気がする。
あと1年か2年たてば、うまい運用状態になるような気がする。
空港から市内までの地下鉄工事も進んでいる。2020年には完成するらしい。しかしその頃、もうこの空港は満杯になっている気がしないでもない。新空港の建設はすでに決まっている。ロンタン空港という。つまり地下鉄が完成したときには、空港はもっと先。いまのタンソンニャット空港と併用になるのかもしれないが、またしても追いかけっこの感がしないでもない。
「Delay」の表示はほかのアジアの空港より多い